「攻めのカスハラ対策」で従業員を守る!  ~➂カスハラ対策の有事(後)対策と経営層の役割(2025年6月27日掲載)

「攻めのカスハラ対策」で従業員を守る!  ~➂カスハラ対策の有事(後)対策と経営層の役割(2025年6月27日掲載)

1.カスハラ対策の法制化

2025年64日、衆議院本会議において「労働施策総合推進法」の改正案が可決・成立し、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策が法制化された。この改正により、事業主には、従業員がカスハラによって就業環境を害されることのないよう、「相談に応じる体制の整備」や「必要な措置の実施」等を講じる義務が課されることとなった。これにより、カスハラ対策は一層の進展を見せている。

2.有事(後)の対応:従業員配慮と再発防止の実践

(1)有事(後)のカスハラ対策の全体像

これまで2回にわたって「カスハラ」をテーマに執筆し、前回のコラムでは、カスハラに対する「平時の対策」について概説した。今回は最終回として、「有事(後)の対策」に焦点を当てる。

有事(後)に講ずべき対策は、第1回のコラムで紹介した図表1「リスクマネジメントの観点から見るカスハラ対策」に示した4項目であり、それぞれの要点は図表に記載のとおりである。

図表1 有事(後)のカスハラ対策 [1]

(2)有事(後)のカスハラ対策のポイント

いずれも重要な項目であるが、⑤の「事実関係の正確な確認と事案への対応」については、目前の課題としてすでに多くの企業が取り組んでいることから、本稿では有事における対策の要点として、従業員への配慮の措置」と再発防止のための取組」の2点について補足する。

まず、従業員への配慮の措置については、図表1にも示したとおり、カスハラ発生直後のみならず、一定の時間が経過した後においても、当該従業員のメンタルヘルスに継続的に配慮し、その状態を注視し続ける必要がある。そのためには、現場の管理者に対する意識啓発を図るとともに、前回のコラムでも述べたように、組織として実効性のある相談対応体制を整備しておくことが求められる。

次に、再発防止のための取組については、たとえカスハラの原因が顧客側にあったとしても、自社において改善可能な点が存在しないかを検討し、商品やサービスの内容を見直し、改善を推進していく姿勢が重要である。

前回も述べたとおり、カスハラ対策で最も重要なのは「平時の準備」である。ただし、それだけでは有事に十分対応しきれないこともあり、平時・有事の両面からの対策が求められる。

3.経営層も関与すべきカスハラ対策

(1)カスハラ対応における現場の課題

ここまで平時・有事のカスハラ対策について述べてきたが、カスハラの発生場面はさまざまであり、対応方法も状況によって異なる。例えば、明らかな悪意をもって繰り返される行為に対しては、マニュアルに基づく毅然とした対応や、警察・弁護士との事前連携が有効である。一方で、当初からカスハラを意図していなかった顧客との間で、企業側が事前の期待に応えられなかったことに起因して現場に摩擦が生じている事例も少なくない。そのような場合、現場の従業員からは、顧客からの要望が「無理難題」、すなわちカスハラとして受け止められることもある。このようなケースでは、顧客からの貴重な意見を組織として適切に受け止める体制が整っていないため、現場任せの対応には限界がある。

(2)カスハラ対策は経営の課題でもある

こうした現場の対応だけでは限界があるからこそ、カスハラに関する対応方針は、現場のみに委ねるのではなく、経営層が主体的に判断すべき領域でもある。とりわけ、「顧客の事前期待」を明確化し、どこまで応えるべきかという線引きは、企業のマーケティング戦略やサービス品質に深く関わる経営課題である。

この機会に、自社が対象とする顧客層やその事前期待にどの程度応えるべきか、さらには、どのような商品・サービスを提供すべきかについて、あらためて見直すことが望ましい。

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SOMPOリスクマネジメントでは、これまでのクレーム対策・顧客満足のコンサルティング実績・経験・知見をもとに、カスタマーハラスメントに対する各種取り組みを総合的に支援します。

 

[1]⑤~⑧の項目は、厚生労働省『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』(アクセス日:2025年6月16日)より引用し、当社にて整理。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

 

西 彩奈

サステナビリティコンサルティング部 人的資本グループ

人的資本グループリーダー

サステナビリティコンサルティング部 人的資本グループ

産業カウンセラー / 第一種衛生管理者 / キャリアコンサルタント(国家資格) / 消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣事業認定資格) / アンガーマネジメントハラスメント防止アドバイザー / カスタマーハラスメント対応実務者

略歴・実績

前職にてBCMや顧客満足・苦情対応に関するコンサルティング等に従事した後、2020年入社。
15年以上にわたり、人的資本経営支援・顧客満足・苦情対応コンサルティングに多数従事。
特に、製造業、建設業、運輸業、卸売業・小売業、生活関連サービス業・娯楽業や業界団体など幅広い分野の企業に対し、顧客満足(CS)・従業員満足(ES)やハラスメント、女性活躍、キャリアなどをテーマとした研修やコンサルティングなどの実績を持つ。
SOMPO AWARDS2024「チャレンジ」カテゴリー 最優秀賞受賞。
■講師・委員等:
・厚生労働省委託事業「平成27年度働きやすい職場環境形成事業(パワハラ対策取組支援セミナー分)」事務局
・公益財団法人消費者関連専門家会議(ACAP) 執行委員・CXイノベーション研究会 研究員
■著書・寄稿・取材など:
・『現場責任者のための「悪質クレーム」対応実務ハンドブック~カスタマーハラスメント対策の手引き~』,ACAP編著,PHP研究所(執筆協力)
・ 『新時代のリスク対応37 パンデミックで高まる人材リスクー働きやすさ・働きがいを』(2021年9月2日付、日刊工業新聞)
・ 『新時代のリスク対応98 人的資本経営の往古来今ー分析・強化・開示が重要ー』(2024年5月16日付、日刊工業新聞)

・『明るく働きやすい職場づくりのためのハラスメント防止研修』(令和4年12月号~令和5年2月号菓子、菓子工業新聞)

・『悪意 VS 企業 カスハラ炎上・・・揺らぐ性善説』(2023年3月27日号 日経ビジネス)

・リスク管理の視点から取り組むカスハラ対策のアプローチ-人的資本経営を推進する上で「経営課題」として認識・対処を-(2024年11月5日号、週刊金融財政事情)

・東京都、全国初のカスハラ防止条例成立 25年4月施行(2024年10月4日、日本経済新聞(朝刊)コメント)

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