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【防災訓練のマンネリ化解消】効果的な評価・検証を導く「討議型訓練」の活用術ーロールプレイング型図上訓練との訓練手法の比較と成功のポイント

2026年2月2日

クライシスマネジメントコンサルティング部 社会公共グループ

主任コンサルタント

酒井 学

【防災訓練のマンネリ化解消】効果的な評価・検証を導く「討議型訓練」の活用術ーロールプレイング型図上訓練との訓練手法の比較と成功のポイント

はじめに:訓練の「やりっぱなし」や「マンネリ化」に悩んでいませんか?

「毎年同じようなシナリオで訓練を行っており、マンネリ化している」
「訓練を実施したが、検証結果が計画改善等に活かされていない気がする」
地方公共団体の防災訓練担当者様から、このようなご相談をいただく機会が増えています。
多くの自治体で、災害応急対応能力の向上や関係機関との連携強化を目的とした『ロールプレイング型図上訓練』が実施されています。しかし、規模が大きくなるほど「イベント化」してしまい、当初想定していた「訓練検証項目」の評価や、実効性のある計画等の改善策が得られないという課題も浮き彫りになっています。

本コラムでは、こうした課題を解決し、防災計画の評価・検証に特化した手法である『討議型訓練(「机上訓練(Table Top Exercise, TTX)」、「検討会」方式訓練)』について、『ロールプレイング型図上訓練』と比較しながら、その効果的な活用法を解説します。

※机上訓練:地図等は使用せず、シナリオに沿ったそれぞれの役割分担や連携体制を確認するために行われる訓練

※図上訓練:地図等を用いて、災害時の対策を話し合う訓練

1.防災訓練の現状データから見る「質」の課題

まずは、自治体における令和5年度の訓練の実施状況を振り返ります。
「地方防災行政の現況―令和5年度及び令和6年4月1日現在における状況(総務省消防庁)」[1]を分析すると、以下の傾向が見えてきます。

都道府県と市町村の実施傾向

  • 都道府県:地震・風水害を想定した「実動訓練」「図上訓練」を積極的に実施
  • 市町村:土砂災害を想定した訓練回数は多いものの、「図上訓練」の実施割合は低い傾向

【訓練の実施回数(令和5年度)】

(出典:総務省消防庁 地方防災行政の現況「防災訓練の実施状況」[2]を基に当社作成 )

【訓練の形態(令和5年度)】

(出典:総務省消防庁 地方防災行政の現況「防災訓練の実施状況」[3]を基に当社作成 )


浮き彫りになる3つの課題

「都道府県の図上訓練に関する調査の結果について(総務省消防庁)」[4]を当社で分析した結果、以下の課題が見えてきます。

    1. 想定の固定化(マンネリ化)地震や津波など特定の災害想定に偏り、応用力が育ちにくい
    2. 連携不足:関係機関を巻き込んだ訓練が年1回程度に限られ、顔の見える関係構築が不十分
    3. PDCAの未達(評価・検証不足):約半数の団体で、訓練結果の計画、マニュアル等への反映(フィードバック)が十分にできていない

  • 形だけの訓練で終わらせないためには、何のために訓練を実施するのか」目的に合わせた訓練手法の選択が不可欠です。

2.「討議型訓練」と「ロールプレイング型図上訓練」の違いと使い分け

マンネリ化や訓練検証の不足を解消するために有効なのが、『討議型訓練』です。
現在主流の『ロールプレイング型図上訓練』とどのような違いがあるのか、以下の比較表で整理しました。


項目 討議型訓練 ロールプレイング型図上訓練
主な特徴 「対話」重視
進行役の問いかけに対し、参加者が議論して解決策を探る。
「演習」重視
コントローラーからの状況付与に対し、役割になりきって対応する。
訓練形式 ファシリテーターによる進行
※シナリオに追われず、着実な意見交換が可能
状況付与による進行
※時間経過と共に変化する状況への即応力が問われる
主な目的
計画・マニュアルの課題抽出
「この計画・手順で本当に動けるか?」を深掘りする。
対応能力・連携・手順の確認
「計画・マニュアル等に定めた手順通りに動けるか?」を検証する。
自由度
(自由に意見交換が可能)
(所定の役割に徹する必要がある)
準備負担
(比較的安価・短期間で準備可能)
(膨大なシナリオ・状況付与の作成が必要)
対象者
ある程度の実務知識がある職員向け
初任者からベテランまで(機器の使用方法習熟や災害対応手順の習熟)

▼ ここがポイント

  • 討議型訓練:じっくりと膝を突き合わせ、「マニュアルの不十分な点」や「組織間の認識ギャップ」を見つけ出すのに最適
  • ロールプレイング型図上訓練:本番さながらの緊張感で「通信機器等の使用方法の習熟」「災害対応能力」を鍛えるのに最適

3.「討議型訓練」のメリット(評価・検証の確実性)

なぜ今、『討議型訓練』が注目されているのでしょうか。その最大の理由は、「評価・検証(検証項目の達成)」の確実性にあります。

ロールプレイング型図上訓練では、コントローラーからの付与情報の処理に追われ、本来の目的のひとつであった「計画等の評価・検証」がおろそかになりがちです。一方で、『討議型訓練』には以下のメリットがあります。

  • 課題の「見える化」:シナリオの進行を一時止めてでも、「なぜそう判断したのか?」「マニュアルの記載は適切か?」をその場で深掘りできます。
  • コストパフォーマンス:コントローラー等の要員や状況付与が不要なため、低予算・省力化で実施可能です。
  • 認識の統一:関係機関が一堂に会して議論することで、文書だけでは伝わらない相互の動きを理解できます。

実際に自治体において『討議型訓練』を実施し、成果を上げている事例[5]もあります。

4.【プロの視点】2つの訓練手法を組み合わせたハイブリッド運用

私たちがコンサルティングを行う現場では、どちらか一方の手法に絞るのではなく、両者を組み合わせることを推奨しています。

推奨パターン:ハイブリッド型の訓練設計

• Step 1:事前説明会 × 討議型訓練(ミニTTX)
ロールプレイング型図上訓練の事前説明会の場で、特定の重要テーマ(例:避難所開設の初動)に絞った「討議型訓練」を行います。ここでマニュアルの認識を合わせ、不安要素を洗い出します。

Step 2:ロールプレイング型図上訓練(本番)
Step 1で確認した手順を、時間制約のある中で実践できるか試します。


• Step 3:振り返り(評価・検証)
Step 1の議論とStep 2の結果を照らし合わせることで、「わかっていたのにできなかった原因」が明確になります。

この手法を取り入れることで、初任者等への教育と、計画・マニュアル等の検証を同時に達成することが可能になり、訓練の投資対効果が向上します。

まとめ:実効性のある防災体制の構築に向けて

防災訓練は「実施すること」がゴールではありません。訓練を通じて組織・計画の弱点を発見し、実際の災害時に一人でも多くの住民の命・財産を守るための災害応急対応力向上を図ることが目的です。
訓練の「マンネリ化」や「評価・検証不足」を感じているのであれば、従来の手法にこだわらず、『討議型訓練』の導入や、手法の組み合わせを検討してみてはいかがでしょうか。

防災訓練に関するご相談

参考文献

参考文献
[1][2][3]総務省消防庁, 地方防災行政の現況―令和5年度及び令和6年4月1日現在における状況, 防災訓練の実施状況, https://www.fdma.go.jp/publication/bousai/
[4]総務省消防庁, 都道府県の図上訓練に関する調査の結果について, 平成26年11月, https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento141_04_shiryo01-3.pdf 
[5]埼玉県, 埼玉版FEMAについて, https://www.pref.saitama.lg.jp/a0401/fema/femagaiyou.html 

酒井 学

クライシスマネジメントコンサルティング部 社会公共グループ

主任コンサルタント

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※コンサルタントの所属・役職は掲載当時の情報です。