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女性活躍推進法の改正――情報公表義務の拡大が企業における女性の参画拡大にもたらす効果
2025年6月に成立した改正女性活躍推進法により、多くの企業で女性活躍に関する情報開示への準備が進められている。2026年4月1日の情報公表義務化を前に、本コラムでは改正のポイントと企業が取り組むべき対策について解説する。
1.法改正の内容――企業に課される新たな義務
2025年6月11日に公布された改正女性活躍推進法の主な内容は以下の通りである[1]。
- 法の有効期間の延長:女性活躍推進法の有効期間が、2026年3月31日から2036年3月31日まで延長された(公布と同時に施行)。
- 公表義務の拡大:これまで「男女間賃金差異」の公表義務が課されていたのは常時雇用労働者数301人以上の企業であったが、2026年4月1日から、常時雇用労働者数101人以上の企業にも同情報の公表義務が課される。
- 公表項目の拡充:2026年4月1日から、常時雇用労働者数101人以上の企業に対し、「女性管理職比率」の公表が義務付けられる。
- 「プラチナえるぼし」認定要件の追加:事業主が講じている求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「就活セクハラ」)の防止に係る措置の内容を公表していることが、「プラチナえるぼし」認定の要件に追加される(施行日は、公布後1年6か月以内の政令で定める日。2026年10月1日を施行日とする案が示されている[2])
表1は、常時雇用労働者数101人以上の企業に対し情報公表が義務付けられた項目について、法改正前後の変化をまとめたものである。
| 企業等規模 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 301人以上 |
|
|
| 101~300人 |
|
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(出典:厚生労働省「改正女性活躍推進法等のポイント」、「女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせ」を参照し当社作成[3])
※1 「採用した労働者に占める女性労働者の割合」「男女別の採用における競争倍率」「労働者に占める女性労働者の割合」「係長級にある者に占める女性労働者の割合」「管理職に占める女性労働者の割合」「役員に占める女性の割合」「男女別の職種または雇用形態の転換実績」「男女別の再雇用または中途採用の実績」の8項目。
※2 後述する表2を参照。
今回の法改正内容には、上記以外に「女性の健康上の特性への配慮」「ハラスメント防止の強化」「職業生活と家庭生活の両立支援の制度明確化」などが含まれている。
2.情報公表の義務化による動機付け
今回の法改正で特筆すべき点として、常時雇用労働者数101人から300人という比較的小規模な企業にも、性別や職制・賃金に関するデータ公表が義務化されたことが挙げられる。令和3年経済センサス-活動調査[4]によれば、企業常用雇用者規模が100人~299人の会社企業の数は33,831社である。一方、企業常用雇用者規模300人以上の会社企業数の合計は14,913社である。統計は100人以上、改正法は101人以上のため社数に誤差はあろうが、情報公表義務の対象企業数が従前の約3倍に拡大したと解釈できる。
特定の活動に取り組む企業の増加は、社会全体の意識変革を促す。近年ではサステナビリティや働き方改革の意識・取組みの広がりが記憶に新しいだろう。今回の法改正により、女性活躍に関する情報公表に取り組まざるを得ない企業が増えたことが、賃金・雇用形態・家庭生活との両立を理由とする離職・管理職比率等における男女差の縮小、そして男女共同参画社会の実現への関心拡大につながることを期待したい。
データは毎年公表することとなるため、前年度の状況との差が必ず可視化される。もし前年比で男女差が拡大していれば、投資家や求職者から指摘され、現状の認識や、今後の取組みについて説明を要求されることもあるだろう。データ公表後のコミュニケーション次第では、ステークホルダーからの評価が変動し得る。
また、多くの企業は自社と競合他社を様々な点で比較し、競合他社より優位に立てるよう、あるいは劣後しないよう、策を講じている。女性活躍に関するデータも、企業が自社と競合他社を比較する項目の一つとなる。公表したデータが競合他社を著しく下回る場合、自社の評価にも影響するので、「公表して終わり」にはできない。情報公表の義務化は、企業間の比較を通じて、「女性の職業生活の改善への取組み」を促す仕組みともいえる。
3.女性活躍の進展を測る指標
公表が義務化された男女間賃金差異・女性管理職比率以外にも、女性活躍の進展度合いを測る指標は様々ある。例えば、女性活躍に関する情報公表義務を負う企業は、厚生労働省が省令(※2)で定めた公表項目の中から企業規模に応じて項目を選択し、情報を公表する。
|
「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に関する7項目 |
「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」に関する7項目 |
|---|---|
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(出典:デジタル庁「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令の一部を改正する省令」を参照し当社作成[5])
女性活躍推進の観点では、できるだけ多様なデータを集めることが望ましい。女性活躍に関するデータは、自社の女性活躍推進の現状と課題を把握し、今後の対策を検討するための重要な材料となるためだ。
例えば、「労働者に占める女性労働者の割合」が低い場合には採用に課題が、「女性の育児休業取得率」が低い場合には育児休業の取得や育児休業後の復職支援に課題があると類推できる[6]。「係長級にある者に占める女性労働者の割合」が平均程度である一方、「管理職に占める女性労働者の割合」が平均を下回っている場合、係長から課長への昇進に伴う長時間労働や休暇取得の困難さが、女性の昇進意欲と昇進機会に影響している可能性が一因として推測される。
「女性の採用・育成がうまくいかない」「なぜか女性が辞めてしまう」といった悩みを抱えている企業こそ、様々なデータを集め、課題の特定・対策を進めていただきたい。
4.おわりに
情報公表義務を負う企業の増加や公表項目の拡充により、女性活躍推進は、今以上に多くの企業が向き合うべき重要な経営課題となる。念頭に置いていただきたいのは、情報の公表自体が女性活躍を促進するわけではないことだ。男女間賃金差異や女性管理職比率等はあくまで結果を示すものである。情報の公表を通じて達成すべきは、結果の背景にある採用・育成・昇進・両立支援等の在り方を見直し、改善に取り組み、職業生活における男女差を是正することである。今回情報公表義務が課された企業に対しては、情報公表を単なる義務と受け止めて対応するのではなく、自社の組織運営を見直す出発点として活用することを期待したい。
※1 正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)。
※2 正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令」(厚生労働省令第162号)。
女性活躍推進への取組みに関するご相談
参考文献
[1] 厚生労働省. “令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について.” https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html. (アクセス日:2026-01-15).
[2] 厚生労働省. “第89回労働政策審議会雇用環境・均等分科会【資料3】労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令案要綱.” https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001635696.pdf, (アクセス日:2026-01-20).
[3] 厚生労働省. “改正女性活躍推進法等のポイント(令和7年12月23日作成).” https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001620180.pdf, (アクセス日:2026-01-15), 厚生労働省. “女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせ(2022(令和4)年12月28日改訂).” https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000962289.pdf, (アクセス日:2026-01-15)
[4] 総務省統計局・経済産業省(調査主体). “令和3年経済センサス-活動調査 企業等数、従業者数別企業等数.” e-Stat 政府統計の総合窓口. https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004006260 (アクセス日:2026-01-15). 企業産業中分類を「全産業(S_公務を除く)」、経営組織を「会社企業」、地域を「全国」、時間軸を「2021年」に設定して表示した。従業者規模が300~999人の企業等数は11,075、1000~1999人の企業等数は2,098、2000~4999人の企業等数は1,171、5000人以上の企業数は569。
[5] デジタル庁. “令和8年4月1日施行 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令の一部を改正する省令(令和七年厚生労働省令第百二十五号).” E-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000100162/20260401_507M60000100125, (アクセス日:2026-01-15)
[6] 堀江敦子. 女性活躍から始める人的資本経営 多様性を活かす組織マネジメント. 日本能率協会マネジメントセンター, 2024, 270p, pp208-209参照.
執筆者紹介
石澤 智恵 Chie Ishizawa
サステナビリティコンサルティング部 人的資本グループ ジュニアコンサルタント
国内IT広告企業にてエンゲージメント向上を目的としたインターナルコミュニケーションの推進、 国内製紙会社にて統合報告書制作・サステナビリティサイトの改修等の非財務情報開示に従事。 SOMPOリスクマネジメント入社後、民間企業向けのハラスメント対策支援業務等に携わる。
(2026年1月時点)
石澤 智恵
サステナビリティコンサルティング部 人的資本グループ
ジュニアコンサルタント
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