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半導体人材不足の未来を切り開く!企業が取るべき人材戦略強化対策とは(2025年7月31日掲載)
1. はじめに:半導体産業復活のカギは 「人材」 にあり
半導体業界では需要拡大にともない、深刻な人手不足が生じています。優秀な人材の確保や育成、そして定着に向けて、各社が人材戦略の見直しを迫られています。
本コラムでは、半導体業界の現状と課題を踏まえつつ、リスク管理部門や人事部門などが取り組むべき具体的な対策を解説します。
2. 日本の半導体業界の変遷と現状
1980年代、日本は半導体市場で世界を席巻していました。しかし、日米半導体協定以降、シェアは低下の一途を辿り、現在は1割程度にまで落ち込んでいます。
| 時期 | 状況 |
|---|---|
| 1980年代 | 日本企業が世界市場を席巻 |
| 1986年 |
日米半導体協定等と共にシェア低下開始 |
| 2025年 | 世界シェア1割程度に低下 |
日本政府は半導体産業の再興を目指し、3年間で3.9兆円規模(GDP比0.71%)の支援や[1]、TSMC(台湾の半導体メーカー)の熊本工場の誘致、最先端の次世代半導体を開発するRapidus(ラピダス)の設立支援など、積極的な投資を行っています。しかし、これらの取組みの成否は、人材の育成と確保にかかっています。
3. 半導体業界の現状(需要拡大と人材不足)
AI(人工知能)やEV(電気自動車)の普及により、半導体需要は爆発的に増加しています。データセンター向け半導体市場は2030年には倍増が見込まれ、日本政府も国内の半導体関連売上高を15兆円に引き上げる目標を掲げています[2]。
国内のみならず、海外でも先進各国で人材獲得競争が激化しており、優秀な頭脳がより良い雇用機会を求めて日本から海外に流出するといったことが危惧されています。
4. 人材戦略:企業が取るべき具体的対策
半導体業界の人材不足は、技術革新の速さや製造プロセスの複雑さなど、構造的かつ複合的な要因によって深刻化しています。特に、専門性の高いエンジニアの確保や定着が困難となる中、半導体技術に関するナレッジをどのように継承・活用していくのかが、企業の人材戦略上の重要課題となっています。そのため、優秀な人材を確保・定着・育成すると同時に、エンジニアの専門知識や経験を組織ナレッジとして蓄積し、形式知として整備・共有することにより、再利用性を高めることが、持続的な競争力を維持する上で不可欠です(ナレッジマネジメント)。したがって、リスク管理部門や人事部門などが中心となり、以下のような対策を講じることが望まれます。
A. エンジニアが有するナレッジの継承・活用
| 必要な対策 | 具体的な取組み |
|---|---|
|
属人的業務の洗い出し ※組織内で 「問い」 や 「健全な対話」 が起きにくい組織構造を明らかにすること |
暗黙知の可視化(構造的課題の発見) 対人関係の摩擦、教育の困難さ、非効率的な業務運用、精神的負荷などがないかアンケートにより調査。暗黙知に埋もれた組織構造的課題を明らかにする。 |
|
形式知への転換(対話の質の向上) 暗黙知化されたノウハウなどからの中から、重要性・有用性の高いものを選定。業務平準化に向けて、対話の質を高める仕組みを整備し、暗黙知から形式知へと転換を図る。 |
B. 従業員のエンゲージメントの向上
| 必要な対策 | 具体的な取組み |
|---|---|
| 従業員の声を活かす仕組みづくり |
パルスサーベイの自由記述など、従業員の声(データ)を用い、AIデータ分析により主要な要因を自動抽出する。 構造化を行い、会社単位から組織単位に落とし込み、対策の優先順位を明確にして、施策を実行する。 |
5. まとめ:人材戦略強化で未来を切り開くために
半導体業界の未来を切り開くためには、人材戦略の強化が不可欠です。エンジニアが有するナレッジの継承・活用、従業員のエンゲージメントの向上などを通じて、優秀な人材を惹きつけ、育成し、定着させることが重要です。主体的に取組み、多様な人材が活躍できる環境を整えることこそが、日本が再び半導体大国として世界をリードするための鍵となります。
今回紹介した対策を講じることで、貴社の半導体事業の未来を切り開く一助になれば幸いです。
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人材の採用や維持などのお悩みがありましたら、専門コンサルタントがアドバイスいたします。
人事・総務・広報部門の方
業務改善部門・コンプライアンス部門・事業本部の方
[1]「日本の半導体支援、GDP比で米欧上回る 3年で3.9兆円」, 日本経済新聞, 2025-04-09, 日本経済新聞電子版
[2] 内閣府 商務情報政策局 情報産業課, 令和6年10月28日,「半導体政策について」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/ab1/20241028/sankou3.pdf (アクセス日:2025-06-02)
[3] 経済産業省 METI Journal ONLINE, 2024年3月19日, 「半導体人材の育成で産官学が総力戦。小さなチップに大きな夢を追う」https://journal.meti.go.jp/p/32849 (アクセス日:2025-06-02)
[4]「SEMI幹部 「2030年、世界の半導体人材150万人不足」」, 日本経済新聞, 2024-12-12, 日本経済新聞電子版
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