新入社員のSNS投稿から見える炎上問題と、組織的なコンプライアンス教育の必要性

2026年7月1日

クライシスマネジメントコンサルティング部
クライシスコミュニケーショングループ
上級コンサルタント 早坂 豪
GRCコンサルティング部
危機管理第2グループ
主任コンサルタント 神波 翼

新入社員のSNS投稿から見える炎上問題と、組織的なコンプライアンス教育の必要性

4月に新入社員を迎える企業も多い中、新入社員や若手社員の投稿に起因するSNS炎上が様々な業種業界で起きている。

SNSサービスは多様化し、サービス事業者ごとに機能の特性が異なっている。個人であれ企業であれ、情報発信の仕方はSNSサービスの機能特性に合わせるだけでなく、機能変更やアップデートに合わせた使い方に適応していく必要がある。特にSNS情報発信は、企業のブランドイメージを損なわないよう、発言の内容、発言の仕方や言葉遣いだけでなく、会社の機密情報や顧客情報といった情報の取り扱いにも注意が必要だが、情報管理・対応のルールは各社で異なっている。働く環境によっては、SNS利用についてしっかりとした教育を受けず、その特性や守るべきルールを理解しないまま利用している人もいるだろう。このような複雑化したSNS活用時代を踏まえ、昨今目立った新入社員のSNS投稿による炎上事例とそこに潜む問題から、企業はどのように対応を取るのが良いかの一例を解説する。

1.なぜSNS炎上が起きるのか

知人、友人の日常投稿を見たり、著名人の情報を得たり、企業やサービスを知ったりするなど、ネットワーク上の「つながり」から情報を得るのに便利なSNSサービスは、今や多種多様なものが社会に浸透している。代表的なSNSサービスは以下のとおりである(表1)。

表1 国内の主要なSNSサービス

サービス名 特徴
X 文字投稿ベースのSNSサービスとして開始。現在は写真、音声、動画投稿など幅広く活用ができる。投稿のシェアのしやすさ(拡散性)が特徴。
Instagram 写真や画像をベースとしたサービスで、同じキーワードに興味関心を持つユーザー同士で投稿者の情報を得られる「ハッシュタグ」を使った情報検索も多い。
Threads Instagramと連携して開始された、文字・写真をベースとしたSNSサービス。Xと似た機能が多い。
BeReal. ユーザーがアプリで通知を受け取ったあと、2分以内に写真を撮影し投稿するという機能制限を設け、飾らない日常を共有するサービス。
Facebook 世界最大の実名登録制SNS。実名登録によりアカウントの人物像が明確なため、匿名サービスと比較して一定程度の信頼性が保たれているのと、企業や団体ページなどが充実。
LinkedIn 実名制によるビジネス特化型のSNS。転職やキャリア構築といった活用や、業界関連の人脈形成、連携など「ビジネス」を軸として個人と企業のコミュニケーションの橋渡しを担うサービス。

SNS炎上は、単にSNS上の本人の投稿が発端となって炎上するだけではない。本人と接点の無い第三者により、他のSNSの投稿内容や、現実世界で起こった出来事が、拡散力の強い「X」に持ち込まれて炎上が加速することが当たり前に起きている。その他、発信に影響力をもつ「インフルエンサー」による投稿の拡散や、企業の個人株主がSNSというオープンな場で「公開質問」を直接企業に投げかけて、投稿の注目を集めることも起きている。

表2 2026年4月に起きた新入社員や若手社員によるSNS投稿の問題 一例

テレビ番組制作会社 番組内部資料や顔写真入りテレビ局入館証の写真の投稿。
大手通信会社 社内文書や勤務シフト表が映り込んだ写真の投稿。
電機メーカー子会社 名札の一部や誓約書などの文書を映した写真の投稿。
小学校教員 勤務先の学校名や教員名が表示されたパソコン画面の写真の投稿。
また、問題の投稿と無関係の画像が、今回の問題であるかのようにした誤情報としてSNS上で広がる(教育委員会が発表)

いずれも第三者によって「X」に再投稿され拡散され、多くの人が知ることとなった。また炎上の当事者となった企業や団体は、問題の投稿に関する対応だけでなく、自分たちと無関係の偽投稿や誤情報が広まると、その問い合わせ対応や注意喚起にも追われることとなり、通常業務への影響も出てしまう。

SNSの投稿内容は、誰でも容易にスマホやPC画面を「スクリーンショット」することで画像記録として保存することができる。そして、その画像は第三者によって「X」上で再投稿されたり、インフルエンサーに情報提供されたりすることで拡散が起きてしまう。テレビ番組制作会社の事例では、Instagramのストーリーズという、投稿後24時間で自動消去となる仕組みで投稿されたものがスクリーンショットされ、他のSNSに転載されたことで大騒ぎとなった。投稿時の公開状態も「親しい友達」にのみという設定だったが、投稿には実名も含まれていたため、SNS上では実名と共に広がってしまい、容赦なく本人を非難する投稿も目立った。後日、テレビ局の社長はこのSNS炎上問題に言及し謝罪もした。企業はこういったリスクに突然直面し、組織としての説明や謝罪に追われてしまっている。

昨今のSNS炎上の背景には、投稿内容の是非だけでなく、投稿後の社会的影響を十分に予測できていないというユーザーのリテラシー不足がある。2025年、損害保険ジャパン株式会社は、インターネットやSNSの最適な活用方法について考えるきっかけにしていただくことを目的に、「ネット・SNSリテラシー(インターネットやSNSの適切な活用方法)について学ぶ機会」に関するアンケート調査(全国の15歳以上の男女1520人に調査)を実施した。同調査の結果、「学ぶ機会がなかった」と回答した人は45%に上り、対照的に、「学校や職場での教育機会(があった)」と回答した人は19%にとどまった。「本・書籍」に至っては10%であり、SNSが普及した今でもリテラシーを体系的に学べる場が依然として少ないことがうかがえる。

ネット・SNSリテラシーについてこれまで学ぶ機会があったかのグラフ

データ出典:「SNSとネットリテラシーに関する意識調査を実施」Q8より(損害保険ジャパン株式会社 2025年3月21日) [1]

特に企業や組織では、個人よりも組織としての信頼性やリスクが前面に出るため、「企業・組織の立場としてSNSをどう利用するか」を理解するための教育・研修は欠かせない。従業員向けの教育・研修を、企業の評判(レピュテーション)低下を防ぐための「将来への投資」として捉えることが重要だが、教育・研修を一方的に受けるだけでは「学んだだけ」になってしまう。学んだことを踏まえたロールプレイングやワークショップを通じ、実際にどのような発信内容がリスクとなるのかを複数の人と議論・検証したり、投稿した内容の影響を常に予測できたりするような思考状態になることが理想形である。「SNSの使い方」は「制限」で終わらせるのではなく、投稿内容の「影響」や「リスク」を踏まえた思考と行動を選べる状態になることが必要と言えよう。

2.入社前コンプライアンス教育の必要性

前項のアンケート調査より、一般的にネット・SNSリテラシーを学ぶ機会が少ないことがうかがえる。

しかし、新入社員によるSNS炎上は、SNSの扱い方だけに起因するものではない。入社初期の段階で機密情報に接触した際、それが機密情報であると認識させ、慎重に取り扱うことを理解させるためのコンプライアンス教育の不足にも原因がある。

そもそも、入社式や初出社の時点で情報接触は始まっている。例えば、配付された研修資料に含まれる社内用語や取引先名、オフィス内のホワイトボードに記載されたプロジェクト名、あるいは研修中に交わされる何気ない会話も十分に機密性を持ち得る情報である。

さらに近年では、入社前から内定者向けにオンラインツールやグループチャットへ参加させる企業もあり、新入社員の認識が伴わないまま「業務上知り得た情報」に触れるタイミングは前倒しされている。

問題は、こうした入社前の初期接触の段階において、多くの内定者が「何が機密情報に該当するのか」という判断軸を持っていない点にある。典型例として、「社外秘と明記されていない情報は公開してよい」「友人への限定公開であれば問題ない」「断片的な情報であれば特定されない」といった個々の誤った理解のままSNSを利用してしまうケースが見られる。こうした認識のズレは、入社後の一度きりの研修で是正できるものではない。むしろ、最初に情報に接触する時点で誤った行動を取らせないこと、情報管理の必要性や情報漏洩のリスクを繰り返し伝えることこそが重要である。

したがって、コンプライアンス教育は「入社後に教えるもの」ではなく、「情報に初めて触れる前に最低限の判断基準を与えるもの」として設計する必要がある。入社前から、社内資料の一部を撮影して投稿した場合に、どのような経路で企業名や案件が特定されるのか、過去事例をもとに示すことが有効である。さらに、情報漏洩が発生した場合には、企業の信用失墜だけでなく、本人に対する懲戒処分や損害賠償請求に発展し得ることを、現実的なリスクとして理解させることが重要である。単に「やってはいけない」と伝えるのではなく、「なぜ発覚するのか」「発覚すると何が起きるのか」「あなた自身にどのような影響が及ぶのか」というプロセスまで含めて認識させなければ、行動の抑止にはつながらない。

また、日々の業務の中で判断を支える行動原則としてコンプライアンスを定着させるためには、同じ内容を繰り返すのではなく、入社前・入社時・配属前後といった節目ごとに、接触する情報の種類に応じて具体例を更新しながら教育を重ねていく必要がある。もし入社前や入社直後の教育が難しい場合は、注意喚起の資料を配付するだけでも、新入社員のコンプライアンス意識を高め、トラブルの未然防止が期待できるだろう。

このように、初期段階で誤った判断基準を形成させないこと、そしてその基準を実務に即して継続的に更新し続けることが、SNS投稿を含む情報漏洩を防ぐうえでの実効的な対策となる。

3.SNSに特化した規程類作成やモニタリング、炎上時の対応計画が必要

ここ数年、企業など組織においては、コンプライアンスや事業上のリスクに関する教育・研修に加え、SNSリスク対策の重要性が増している。社員に対しては、年に1回以上の頻度で最新のSNS炎上事例を題材とした社内研修を実施し、新入社員には入社前または入社時に同様の研修を行うことが望ましい。さらに、SNSリスク対策について部署内や会社全体でミーティングを定期的に行うことで、炎上の抑制や迅速な初動対応にも繋がる。

SNSリスク対策は「研修のみ」で完結せず、規程整備・教育・運用・見直しを含むPDCAサイクルで管理する動きが広がっている。具体的には、SNSガイドラインや投稿ルールの策定、従業員教育、モニタリング体制の構築、炎上発生時の対応計画の整備などである。さらに、これらの取り組みはBtoC企業に限らずBtoB企業でも進んでおり、公式アカウントの運用マニュアルやWEBモニタリングに加え、従業員の私的利用に関するガイドライン整備の事例も増えている。SNS発信による情報漏洩などが企業価値に影響を及ぼし得ることを前提に、組織全体でリスク管理することが重要である。

SNSの炎上を他人事と捉えず、「自社で同様の事態が起きた場合はどう対応するか」という視点で意識を高め、外部の出来事を教訓として組織的な「未然予防策」を講じることが、組織と人材を守る上で最も有効な対応策と言えよう。

4.情報管理を含めたコンプライアンス、SNS危機対応にお困りの方へ

SOMPOリスクマネジメントでは、情報管理を含めた企業のコンプライアンス体制構築支援や社内研修のほか、SNSに関わる各種ご支援(炎上防止教育研修や炎上時初動訓練、炎上前後の広報対応の相談と助言、SNS運用マニュアル策定、投稿監視サービスなど等)まで幅広く実施しています。
ご興味があれば、是非お問い合わせください。

ポスター


自社内での注意喚起に使用できるようなポスターを作成しております。

以下よりダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。

SNSリスク(ネット炎上、なりすまし、内部不正)サービス

コンプライアンス推進支援

参考文献

[1]損害保険ジャパン株式会社NEWS RELEASE(2025年3月21日)「SNSとネットリテラシーに関する意識調査を実施」

https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2024/20250321_2.pdf  (アクセス日:2026年5月27日)

執筆者紹介

早坂 豪 Go Hayasaka
クライシスマネジメントコンサルティング部 クライシスコミュニケーショングループ
上級コンサルタント

企業や自治体の危機管理広報/SNSリスクマネジメント全般の各種支援を行っている。これまでメディア業界では広報やデジタル施策、記者会見や災害対応など幅広いコミュニケーション業務に従事した。
PRSJ認定PRプランナー、上級SNSマネージャー、危機管理士(社会リスク/自然災害)
(2026年6月時点)

 
神波 翼 Tsubasa Konami
GRCコンサルティング部 危機管理第2グループ
主任コンサルタント

企業のリスクマネジメント全般やコンプライアンス推進の各種支援を行っている。
前職では、訴訟・クレーム対応や災害対策業務に従事。
危機管理士(社会リスク/自然災害)
(2026年6月時点)

クライシスマネジメントコンサルティング部
クライシスコミュニケーショングループ
上級コンサルタント 早坂 豪
GRCコンサルティング部
危機管理第2グループ
主任コンサルタント 神波 翼

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