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現地感覚と経営視点をつなぐ海外コンプライアンスの実践 ― “兆し”を見逃さない組織とは ―
2026年1月20日
GRCコンサルティング部 危機管理・コンプライアンスグループ
上級コンサルタント 梶尾 詩織
主任コンサルタント 横川 夏菜
クライシスマネジメントコンサルティング部
グローバルクライシスグループ
グループリーダー 瀬戸 寛喜
企業における不祥事が相次ぎ、コンプライアンス意識が企業で高まっています。
本コラムでは、「海外コンプライアンス」に関連する課題意識を持ったコンサルタントが行った意見交換の概要を報告します。
参加メンバー
1.はじめに ― 企業の海外展開とコンプライアンスの壁
(横川)
近年、海外子会社やサプライチェーン上での不正や労働問題などの不祥事が相次ぎ、コンプライアンスの重要性が改めて注目されています。
私は前職でインドに駐在していましたが、その際「国・地域ならではの商慣習」や「現地従業員との信頼関係の構築」など、ルールをどう運用するかの難しさを感じました。
加えて、SNSの拡散で小さな不正が一夜にして国際問題化する時代。現地の「空気」を理解しつつも、経営視点でリスクを捉えることが欠かせません。
(瀬戸)
そこに加えて、国際情勢の不安定化や経済動向の先行き不透明感が続き、地政学リスクを重要リスクに位置づける企業も増えています。この幅広の概念は、リスク対策を考えるうえで、海外コンプライアンスとも密接に関係してきます。
(梶尾)
企業側も海外拠点での問題を契機に「自社の管理は十分か」と振り返る機会が増えています。ただ、海外子会社をどこまで管理すべきか、線引きに悩む企業が多いのが実情です。
2.当社コンサルタントの取組みと強み
(横川)
まず、今回意見交換を行ったコンサルタントについてご紹介したいと思います。
私は、GRCコンサルティング部危機管理・コンプライアンスグループにて、主に危機管理のコンサルティングを行っています。組織で危機が発生した際に、組織活動の早期回復と被害の最小化を目的として、マニュアル策定や各種研修、対策本部訓練などを行っています。
梶尾さんも同じグループの所属ですが、主にコンプライアンス分野をメインでコンサルティングされていますね。
(梶尾)
はい。私たちは、平時のリスクマネジメント体制構築・運用やコンプライアンス推進を支援しています。
具体的には、リスクアセスメント、コンプライアンス関連規程やハンドブックの整備、研修など、制度面と運用面をサポートしています。
この4月から危機管理・コンプライアンスグループになったことで、平時から有事の対応を見据えて支援できるところが、私たちの強みですよね。
(横川)
そうですね、平時におけるコンプライアンスの取り組みへの支援と、それでも有事が発生してしまった場合を想定した支援とを一気通貫で行っています。一方、瀬戸さんがリーダーを務めるクライシスマネジメントコンサルティング部グローバルクライシスグループは、有事対応も含めたグローバル領域を担当されていますね。
(瀬戸)
はい。海外安全対策や事業リスク対応を中心に、マニュアル策定、研修、訓練(初動対応、意思決定、現地実動訓練など)、海外現地調査、アドバイザリー支援などを行っています。
近年は、海外現地における実際の危機やトラブルに見舞われた際の各種相談も増えており、経験豊富なコンサルタントによる支援実績を積み重ねています。
また、社外専門家や海外パートナーとのネットワークを最大限活かし、テーマごとに最適なソリューションを提供しています。
3.企業が抱える課題
(横川)
海外コンプライアンスに関する相談で感じる課題は何でしょうか。
(梶尾)
全社的なリスクの洗い出しや行動規範整備などに関する相談が多いです。
海外子会社の不正をきっかけに「うちも全社的なリスクを洗い出そう」となる企業が増えていますが、実際には洗い出した後、「どこまで子会社を管理するか」と悩まれているケースもあります。
不正防止のために統一した価値観を設定するべくグループ行動規範を定める企業が多いものの、浸透策を考えるにあたって子会社には遠慮してしまう、といった声もありますね。
(瀬戸)
私のところには、労務問題や各種不正に関わる現地従業員とのトラブル予兆時、発生時の相談も寄せられます。
地域統括や現地子会社では日本本社ほどのリソースは割けず、対応の実効性に課題が多く残っています。とりわけ海外コンプライアンスに関する地域特有の具体的な想定リスクを確認しながら、危機対応体制を整備しておくことが喫緊の課題と認識しています。
(横川)
現地では言語や文化の壁も大きいと思っています。日本からの駐在員は、必ずしも赴任国・地域の文化や言語に造詣があるわけではありません。
現地語の書類を理解しないまま承認してしまうなどの「言葉の壁」や、相見積もりをせず現地従業員に任せきりの発注など「監督の甘さ」が不正の温床になりがちです。同じ企業の中でも、国や地域によって本社の「監視の目」の度合いが異なるケースもあり、「不正のトライアングル(動機・機会・正当化)」が生まれやすい環境とも言えます。
そもそも現地で働くには、現地従業員や他の駐在員に助けてもらいながら、信頼関係を構築することから始まります。だからこそ、「穏便に済ませたい」「数年の任期で帰るから」と「見て見ぬふり」をしてしまいやすい構造もあります。こうした心理的要因へのアプローチも欠かせませんね。
4.提供している支援とその強み
(梶尾)
私たちは、海外子会社のガバナンス・リスク・コンプライアンスの取り組み状況を可視化するアンケート調査を行っています。結果から、海外子会社の危険度についてアドバイスしています。
その後、全社的なリスクマネジメント体制の設計や、子会社へのアプローチ方法までアドバイスします。
様々な業種、特に製造業などで実績を重ねています。
(瀬戸)
グローバルクライシスグループでは、テロや紛争など外部環境に起因するリスクを中心に支援を行っていますが、実際の海外危機は、ガバナンスやコンプライアンスに関わる危機事象も多く見受けられます。一方で、実際の有事の事例では、そもそも参考となるマニュアルが整備できていなかったり、他社事例を参考に危機対応を行う企業は少なかったりするのが実情です。海外コンプライアンスに関わる有事の具体的な対応手順まで落とし込んで整理している企業は少ないと思われます。そのため、これまでの当社の対応支援実績の教訓を整理し、危機発生時に必要な対応手順マニュアルの策定支援が重要と考えています。社内のトラブル支援班の設置、危機管理コンサルタントや弁護士などの社外専門家との連携方法の確認、本社と現地の社内コンプライアンスの推進、リスク管理部門、監査部門などにおける有事の関わり方、広報体制の在り方の整備などすぐに動ける形にしておく必要があります。また、有事に使用する報告書式や対応チェックリストの整備も有効です。
(横川)
当社のコンサルタントは業界経験者が多く、現場の実態を理解した上で実践的な提案ができるのも大きな強みですね。グローバルクライシスグループでは、海外赴任者向けの研修を行う機会もありますが、駐在経験者や長期海外滞在者などが講師を務めることで、実体験を踏まえた研修はお客さまからも評価いただいていますよね。
一方、コンサルティングを行うなかで、本社側の多くの悩みや実態もお聞きし、事業活動や経営の観点から支援することもありますよね。そうした現場感覚と企業としての経営視点の両輪でコンサルティングを行っているのが当社の強みだと感じています。
5.今後企業が目指すべき姿
(梶尾)
まさに、「現地感覚」と「経営視点」の両立が重要だと感じます。駐在員や本社の統括部門が、現地実情を理解しつつも、経営視点(全社ルール・企業理念)を譲らずに浸透させていくことが重要ですね。国や地域によって商慣習や法制度は違いますが、腐敗防止など国際的に共通する基準は存在します。
企業として譲れない点を明確にしつつ、相手の状況を理解して対話することが、真のコンプライアンスだと思います。
(瀬戸)
日本本社と海外子会社とでは、想定する危機や対応方針の認識に違いがあり得ることを踏まえて、海外コンプライアンスへの対応に関する役割分担や責任範囲を決めておく必要があります。危機発生時には、現地従業員の支援が必要となるため、平時からリスクコミュニケーションを促進し、万一の際も迅速・適切に動ける体制を構築しておくことが欠かせません。特に、海外コンプライアンスの不備により、人命安全やビジネス危機へ影響が拡大し得ることも考慮し、総合的な判断力を強化したり、柔軟な有事体制を整備したり、しっかりと準備しておくことが肝要です。
(横川)
企業のガバナンス強化は、駐在員や現地従業員の「安全」にも直結します。
本社は理念や方針を貫きながら、現地の現実にも目を向ける。そのバランスこそ、これからの企業に求められる姿勢だと感じます。
図:兆しを見逃さない体制(現地感覚×経営視点)のつくり方
(SOMPOリスクマネジメント作成)
6.おわりに
(横川)
本日はそれぞれの立場から見る海外コンプライアンスについて、活発な意見交換ができました。私たちSOMPOリスクマネジメントは、現場と経営をつなぐ「橋渡し役」として、企業の持続的成長と安全・安心を支え続けます。
海外事業の拡大が進むいまこそ、「兆しを見逃さない体制」づくりをともに考えていきましょう。ありがとうございました。
海外コンプライアンスに課題をお持ちの方
コンプライアンス推進支援
海外危機管理体制構築支援
GRCコンサルティング部 危機管理・コンプライアンスグループ
上級コンサルタント 梶尾 詩織
主任コンサルタント 横川 夏菜
クライシスマネジメントコンサルティング部
グローバルクライシスグループ
グループリーダー 瀬戸 寛喜
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※コンサルタントの所属・役職は掲載当時の情報です。