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命を守る新たな一歩 ~職場の熱中症対策、今日からできること~(2025年7月14日掲載)
1.2025年6月1日。日本の職場が変わりました。
近年の記録的猛暑により、職場での熱中症による悲しい事故が後を絶ちません。建設現場、作業場、物流・・・屋内外を問わず、私たちの大切な仲間が、命の危険にさらされています。
このような状況を受け、労働安全衛生規則が改正[1]され、職場における熱中症対策が法的義務として強化されました。これは、企業と社会が「働く人の命と健康を守る」という、ゆるぎない決意を示したものといえるでしょう。
2.まず知ってほしいこと
今回の法改正では、熱中症の重篤化を防ぐために、二つの大切なことが義務付けられました。
1. 「おかしいな?」に気づける体制づくり
もし、仲間が「いつもと違う…」と感じたら、すぐに声をかけられる、そして管理者に報告できる体制を整えましょう。
仲間が熱中症だと思ったら、すみやかに管理者に連絡をとったうえで相談し、職場で情報共有しましょう。
誰でも安心して報告・連絡・相談できる職場づくりが大切です。
2. 「もしも」の時のために
熱中症と思われる症状がすこしでも現れたら、すぐに作業を中断し、体を冷やして水分補給し、必要に応じて医師の診察を受けられるようにしましょう。
熱中症が疑われる場合は、躊躇なく水をかけるなどして、体を冷やしてください。
緊急時の連絡先や搬送体制を職場全体で共有しておくことも重要です。
この法改正の趣旨は、単なるルールづくりではありません。私たち全員が、お互いの命を守るために、誰もが確実に実践できる体制を整えることが大切なのです。
3.今日からできること
熱中症対策のために、職場で取り組めることには何があるでしょうか。設備面の対応を確認していきます。
1. 暑さの「見える化」
①気温、②湿度、③日射・輻射など周辺の熱環境の3要素を総合的に評価するWBGT(湿球黒球温度)という指標を参考に、出張先などを含めた職場の暑さを常に把握することが重要です。休憩時間や水分補給のタイミングを見極めるために役立ちます。
2.「涼」を味方に
エアコン完備の休憩室や冷たい飲み物、塩分補給できるものを準備します。
アイススラリーの配布は喜ばれるでしょう。
3. 「風」と「光」のコントロール
冷房、スポットクーラー、ミストファン、日よけなど、できることから始めましょう。
火気を使う場所や風通しが悪い職場、化学物質の飛散が懸念されてファンなどが使用できない職場では、保冷剤を用いる冷却ベストなども有効です。
使われないことを望むばかりですが、担架やAEDの場所も確認しておきましょう。
4.安全管理者のリーダーシップ
職場の安全を守る「キーパーソン」である、あなた。あなたの情熱とリーダーシップが、職場の安全を大きく左右します。以下の業務を通して、仲間の健康を守り、安全な職場環境づくりを目指しましょう。
●「健康」に目を配る:
体調不良者に気づけるようコミュニケーションを図りましょう。
「おかしいな」と思ったら、すぐに仲間に相談できる職場が理想です。
●「知識」を共有:
熱中症に関する知識、応急処置手順などの教育訓練を通じて、予防策や対応策を学ぶことが重要です。
厚生労働省ホームページ「職場における熱中症予防情報[2]」がわかりやすく便利です。
●リスクの「見える化」:
職場の暑さや作業内容を分析し、特に注意すべき場所や作業を特定します。
●対策を「計画」し「実行」:
WBGTや気温を記録したり、作業環境を改善したり、休憩時間を増やしたり… できることから始めてみてください。
水分補給や塩分補給を積極的に呼びかけることも大切です。
●「もしも」に備えて:
熱中症患者が出た場合の対応を、全員で共有しましょう。
救急搬送体制や連携できる医療機関も確認しておくと安心です。
●「振り返り」と「改善」:
熱中症対策でできることはたくさんあります。
一つの対策で終わりではなく、対策の効果を評価し、より良い方法を常に模索しましょう。
●「情報」を共有:
報告体制を整備、情報を共有し、みんなで安全意識を高めることを心がけます。
5.コミュニケーションとテクノロジーの力
熱中症対策は、組織全体で取り組むことが重要です。「大丈夫?」「無理しないで」、仲間を気遣うあなたのあたたかい「声」が何よりも大切です。休憩を促し、声をかけ合い、助け合える、そんな職場をつくりましょう。
そして、近年では、デジタルテクノロジーが熱中症対策を大きく進化させています。
デジタルツールを活用することで、WBGT予測や警戒情報などを効率的に確認し、従業員の体調モニタリングやSOS発信など、職場のひとりひとりに応じた対策を行うことができます。
当社提供「SORAレジリエンス」は、まさにそのようなデジタルツールのひとつです。気象・災害情報とリスク管理を組み合わせた、最大72時間先までのリスク予測により、迅速な判断をサポートするサービスで、WBGT予測や熱中症特別警戒アラート・熱中症警戒アラートの発表状況を地図上で俯瞰して見ることができるため、的確な対策を立てることができます。
さらに、「みまもりふくろう」は、従業員がウェアラブルデバイスを装着して脈拍を測定することで、管理者が従業員の熱中症リスクをリアルタイムで察知できる機能を備えています。
コミュニケーションというあたたかい「声」と、テクノロジーという強力な「ツール」を組み合わせることで、熱中症から仲間を守り、誰もが安心して働ける職場環境を創り出すことを目指しましょう。
デジタルツールを活用した熱中症対策をお探しの方へ
[1] 厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf
[2] 厚生労働省「職場における熱中症予防情報」https://neccyusho.mhlw.go.jp/
奥村 直幸
サービス開発部 リスクプラットフォームグループ
コンサルタント
建設業等における熱中症予防指導員・管理者研修講師(建災防)
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