外国人労働者の安全管理の課題 ――安全文化の違いと言語の壁について考える

人事・労務 NEW

2022年6月24日

リスクマネジメント事業本部
リスク調査部
賠償・労災グループ

主任コンサルタント

木村 一昭

近年、外国人労働者の増加(平成26年の約79万人から令和元年の約165万人)に伴い、外国人労働者の労働災害が増加している。厚生労働省の発表では外国人労働者の労働災害による死傷者数は、平成27年以降毎年2,000件以上発生している。また、死亡災害や後遺障害の残る重篤な災害も多く発生している。(図表 1参照)

図表 1 外国人労働者の労働災害発生状況[](出典元を参考に当社作成)

 

厚生労働省等[2]は、「外国人労働者を雇用する事業者は安全と健康はもとより、快適な職場環境の形成を通じて我が国での生活をより充実したものにし、国際交流の一助としていく心構えを持って対することが何よりも肝要である」として、『中小・小規模事業者のための外国人労働者労働安全衛生管理の手引き』を発行している。本コラムでは、母国との安全文化の違いと言葉の壁による労災リスクについて記載する。

 

(1)安全文化の違い

外国人労働者の母国によって安全文化が異なるため、日本人労働者が当然だと思っている安全ルールは、必ずしも外国人労働者にとって当然ではないことがある。そのため、日頃から外国人労働者が危険な行動をしていないか確認する必要がある。
その理由としては、長い間、母国での仕事上の安全ルールなどが体に染みついていることで日本での安全ルールに適応するのに時間がかかることが挙げられる。
ある企業では、作業手順書は整備されているものの管理者自身が作業手順書通りに作業をしていなかったため、その作業を真似して外国人労働者が被災した。原因の外国人労働者の作業手順書は『管理者の行動』になっていた。母国では作業手順書はなく作業手順は管理者の行動であり、管理者の行動を見て仕事を覚えていたことによるものだった。
この事例の改善策として、まず管理者などにヒアリングを実施して作業手順書の見直しを行った。さらに定期的に管理者が遠隔カメラで作業状況を確認し、ルールの遵守状況を確認した。万が一ルールが守られていない場合は、当該の労働者と面談して再教育を行った。その結果、外国人労働者は、「管理者から見られていること」や「ルールを守らない場合は面談がある」などの理由からルールを守ることが多くなった。背景には管理者に迷惑をかけたくない、怒られたくないという心理が働いていると推察する。

(2)言葉の壁(日本語能力不足)

日本語能力が不十分な外国人労働者に対しての安全教育には、誰でも理解できるような資料を作成する必要があるとともに、安全教育後には内容を理解しているか確認する必要がある。
その理由として日本語で安全教育を実施しても外国人労働者には十分内容を理解してもらえないことが多く、注意喚起などの掲示物の内容も理解できないことが多いからである。
一例であるが、安全教育資料作成の際には写真またはイラストなどを多用した形で作成し、説明する際は、誤解のないように禁止行為などは×で表記する。さらに作成した安全教育資料に関しては、危険情報を共有して認識してもうらために他部署の管理者にメールなどで情報共有する。
また、安全教育の理解度確認に関して、筆者が以前勤務していた工場での体験談を紹介する。
外国人労働者間では、筆者が安全教育内容の理解度確認に来た時には、「わかりました」「大丈夫」と返答することが情報共有されていた。そのことを知らない筆者はどの労働者も理解度が高いと誤った認識をした。その後の対策として、もし、「わかりました」「大丈夫」という言葉が出た場合は、安全担当者や管理者は現場巡視または遠隔カメラで安全教育の内容が理解されているかを確認することにした。
また、遠隔カメラ等で安全ルールが遵守されていないことを確認した場合、現場に行ってその場で指導した。カメラで安全教育の内容が理解されているか確認していることをその場にいた労働者に伝えたところ数日後にはほぼ全員が把握するようになった。カメラで確認していることを周りの労働者に周知できたため、副次的な効果であるが、安全教育の際に質問が出るようになり、安全意識の向上につながったと考えられる。

 

今後も外国人労働者は増加していくと想定される。したがって、外国人労働者の労働安全に関する課題は増加していくと考えられる。課題解決の為には外国人労働者が容易に理解できる教育ツールを作成して、継続的に安全教育を実施することが大切である。また、安全担当者や管理者は現場巡視を行い、特に日本語能力が不十分な外国人労働者に安全に関するルールを繰り返し伝えることが望まれる。

 

 

 


[1]公益社団法人東京労働基準協会連合会 「外国人労働者安全衛生管理の手引き」

外国人労働者数及び休業4日以上の死傷者数

https://toukiren.or.jp/fresc/pdf/tebiki_20210625.pdf

 

[2]公益社団法人 東京労働基準協会連合会 「外国人労働者安全衛生管理の手引き」

Webから入手できる各種情報

https://toukiren.or.jp/fresc/pdf/tebiki_20210625.pdf

木村 一昭

リスクマネジメント事業本部
リスク調査部
賠償・労災グループ

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