ISO 45001の構築と認証取得までの留意点――労働安全衛生レベルの維持および継続的な向上を実現するには

ESG/CSR

2018年1月26日

リスクマネジメント事業部
リスクエンジニアリング事業部

労災・物流グループ 上級コンサルタント

太田 真治

労働者の安心・安全・健康の確保は、労働意欲の向上、企業イメージの向上、事業継続リスクの低減などにつながるため、多くの企業では従来からその重要性を十分認識しています。 
一方で企業に対する社会的要請は法令遵守のみならず、社内ルールや社会常識、倫理観等にまでおよび、これらを含めて常に向上を図ることを求める傾向にあります。このため、企業の労働安全衛生レベルについても労働者やその他の利害関係者のニーズ・期待を勘案しながら自主的に維持および継続的向上を図ることが益々求められてきています。 
このような状況から、多くの経営トップは「自主的かつ継続的に安全衛生対策のPDCAを回すしくみ」とも言える労働安全衛生マネジメントシステムに対しても益々注目するようになっています。 
この労働安全衛生マネジメントシステムの規格として代表的なものにOHSAS 18001(Occupational Health and Safety Assessment Series)があります。ISO規格ではありませんが、労働安全衛生マネジメントシステムに関する世界的に最も広く採用されてきた規格と言えます。 
このOHSAS 18001は2013年にISO規格化することが決定されており、2018年初旬に国際規格 『ISO45001:労働安全衛生マネジメントシステム規格-要求事項及び利用の手引』が発行されることになりました。 
今後、日本でもISO 45001の発行後に第三者認証が始まり、様々な業種・業態において認証取得を目指す企業が増えることが予想されます。

それでは、今後ISO 45001を構築し認証取得を行うまで、どのような点に留意すべきか以下に示します。

まず、ISO 45001の認証取得まで実効性のある取組みとするためにも、社内のプロジェクトの立ち上げから、安全衛生計画の策定、マネジメントシステムの構築と運用、認証取得までの一連の取組みのイメージを持ち計画を立案する必要があります。 
また、従来の規格であるOHSAS 18001はISO 45001が発行されてから3年後に廃止されます。そのためOHSAS 18001の認証を取得している場合にはとくに早期に乗換のための計画を策定することも望まれます。スムーズに移行できるようにISO 45001の規格要求と既存の取組みのギャップ分析を行い、システム構築実務と要する時間を見積もって計画に反映することが望まれます。 
次に既存の安全衛生規程・計画や、ISO 9001(品質)・14001(環境)・27001(情報)など複数のマネジメントシステムを既に構築・運用している場合には、さらにISO 45001を導入することにより組織に大きな負荷がかかるおそれが想定されます。 
統合し、効率的な労働安全衛生マネジメントシステムを構築するだけでなく、他のマネジメントシステムとバランス良く運用し、全てのマネジメントシステムが組織に確実に定着し、有効化が図られることが重要です。 
また、組織は、負傷や疾病を起こす可能性のあるリスクを十分に特定しなければなりません。産業界の中でも特に工場を保有している企業では、一般に現場で負傷するタイプの労働災害が注目される傾向にありますが、有害物質に繰り返し暴露されたり、あるいはストレスの多い環境で働くといった長期にわたって引き起こされる疾病による労働災害も見逃せないリスクとして顕在化してきています。近年は働き方改革などにより、世の中の関心が益々精神疾患などの労働災害にも向けられる傾向にあります。今後はこのような疾病に関するリスクにも留意すべきと考えます。 
最後に留意すべきなのは、認証を受けることはマネジメントシステムのしくみが構築され、運用できることが認証機関の審査によって認められたものであり、システムの有効性や労働安全衛生レベルの維持向上まで保証されるわけではないということです。労働安全衛生レベルの維持および継続的な向上を実現するには、マネジメントシステムの有効化を図るとともに、各種安全衛生対策の充実に繋げていくことが重要です。 
ISO 45001の認証取得に向けて取り組む場合には、以上の点等に留意しながら、組織にしっかり定着する実効的な労働安全衛生マネジメントシステムを構築することが重要であると考えます。

太田 真治

リスクマネジメント事業部
リスクエンジニアリング事業部

労災・物流グループ 上級コンサルタント

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