ネットの口コミに対し、医療機関が取り得る方策

医療・介護 NEW

2024年5月22日

医療・介護コンサルティング部 企画グループ

主任コンサルタント

関 悠希

Googleマップで医療機関を探すことがある。その際、つい目を向けてしまうのが口コミであるが、感謝の気持ちなどを表した高い評価もあれば、苦情を書き連ねた低い評価も目に付く。医療機関にとって悩ましいのがこの低評価の口コミである。

誹謗中傷を除き[1]、医療機関が取り得る対応としては、口コミへの返信(謝罪や誤解の訂正)や運営側への削除依頼が挙げられる。しかしながら、多くの口コミは、いつ、どこで、どのような場面で発生したのかが不明であり、返信だけでマイナスイメージを払拭することは難しい。また、削除に関しても、運営者が不当と判断しなければ削除されなかったり、削除までに時間を要したりと、いずれも手間がかかる割に高い効果が期待できない。では、そのまま放置するしかないのだろうか。

 

医療機関のGoogleマップの口コミを分析した研究では、ネガティブな口コミの内容としては「医師の応対」が最も多く、以下、「事務職員および受付の応対」「待ち時間および予約システム」「看護師の応対」と続いたとしている[2]。また、東京都が運営する「患者の声相談窓口」に寄せられた苦情では、医療従事者の接遇といった「コミュニケーションに関すること」が38.0%と最も多いことに鑑みると[3]、Googleマップの苦情の傾向が特別変わっている印象はない。そうであれば、結局は日ごろ医療機関が、投書箱などで患者から直接受ける苦情に対応していくことが、ネット上の苦情を減らすことになるのではないか。

筆者が聞くところでは、医療機関における苦情対応では、関連部署で個別に対応して終わりとするケースが多いが、これでは同じような苦情が繰り返され、その都度職員が対応策の検討をする破目になる。苦情の顛末はデータベース化していくのが望ましい。データベース化で主に実現したいのは、苦情の可視化(どこで何がどの程度起きているのかを把握する)と検索機能(苦情対応をナレッジとして活用する)である。これにより、再発防止や未然防止、対応の標準化、職員の負担軽減、さらには患者視点に立ったサービスの提供や開発が可能になる。データベースの構築には幾つもの工程を要するが、取り掛かりとしては、電話や文書など異なる形態で存在している苦情を、一元化する方法について検討するとこから始めたい。データベース化に人員を割くことが難しい場合は、一般企業で用いられているVOC(Voice Of Customer)分析ツール[4]の利用を検討してもよいだろう。データに基づき苦情に効果的な対応を取ることで、苦情そのものを減らすことが期待できる。

 

なぜ、院内に設置されている投書箱ではなく、ネットに投稿するのだろうか。ネットの方が手軽、帰宅後に自分の思いを伝えようと思い立った、自分の経験を広く知らしめたい、あまりにも憤りが激しく医療機関の評判を貶めたい等が考えられるが、時間や場所を問わない手軽さ、裏を返せば医療機関に直接気持ちを伝える手段の少なさが、ネットが選択される一つの要因と思われる。それならば、医療機関が、患者が手軽に意見や思いを発信できる場を用意してはどうだろうか。

例えば、患者向けのアンケートをGoogleフォーム等で作成、会計時にアンケートのQRコードを掲載した紙を渡し、患者は手が空いた時にスマートフォンからアンケートに回答する。先述のようにネットの口コミは情報が不足していることが多いが、アンケートでは、年代、性別、受診日、受診科等、最低限分析に必要な情報を入力項目として用意し、感想や意見を投稿してもらう。その時々で医療機関として患者の評価を測りたい項目(新たな設備の使い勝手等)を追加するのもよいだろう。患者の声をネットではなく、医療機関に向かわせるのもネット上の苦情を減らす一計になると考えられる。

 

対「ネットの口コミ」で考えると、あまりにも対象が広くとらえどころがないため、対応する術がないように感じる。しかし、ネットの口コミを数ある患者の苦情が表出した一つの形態ととらえ、再発防止、対応の標準化等を念頭に投書箱等の身近な苦情に対応していくこと(そのためには苦情をデータとして処理すること)、患者の声が適切に医療機関に届けられるような環境を整備していくことで、結果的にはネットの苦情を減らすことにつながるのではないだろうか。

 

 

 

SOMPOリスクマネジメント株式会社 医療・介護コンサルティング部では、医療機関における患者の声の活用や患者を対象とした調査に関するご相談を承っております。お気軽にお問合せください。

 

 

 

 

 


  1. 医療機関は命や健康に関わるサービスを提供する特性上、他の産業に比べて辛辣で、時には私怨とも取れるような評価も多く見受けられる。そうしたものや医療機関および職員の名誉棄損に関わる悪質なものは、今回取り上げる口コミの対象外としている。
  2. 医療機関のGoogleレビューにおける評点とクチコミ評価項目の分析:観察研究, 竹久和志,本田真也,日比隆太郎,杉丸毅,樋口智也,松井智子,井上真智子,大磯義一郎,日本プライマリ・ケア連合学会誌2023,vol.46,no.1,p.2-11
  3. 令和4年度「患者の声相談窓口」実績報告
    https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/sodan/madoguchi.files/04jisseki.pdf
  4. 顧客の声を収集・分析することで、サービスの改善や開発を図るシステム

関 悠希

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