海外進出する企業に求められる危機管理について――ミャンマー軍事クーデター

危機管理

2021年3月12日

リスクマネジメント事業本部
BCMコンサルティング部

グローバルクライシスグループ
主任コンサルタント

花田 学

2021年2月に発生したミャンマー軍事クーデターの動向について、先週末から状況の悪化が見られる。2021年3月10日、日本外務省は、帰国の是非を検討することを推奨するとし、ミャンマー滞在中の邦人に対してスポット情報を発出した*1。

現在、反政府活動の参加者が日本人を含む外国人を直接標的に危害を加えることは一般的には考えにくいが、反政府活動が激化した場合、外国人が騒ぎに巻き込まれることで危害を受ける危険性は高まる。

また、デモ隊や治安機関に近づく、写真を撮るなどの行為を行った場合、ターゲットにされてしまう危険性があるので、そのような行為は今後特に注意し、慎む必要がある。

直近現地で起こっている状況を以下に記載する。(表1)

表1 ミャンマーにおけるリスク

  留意すべき予兆事象 予想される今後の影響
軍政府による病院・大学キャンパスなどの施設掌握 軍の活動拠点化

反政府デモ参加者の死者数の増加 治安部隊が実弾発砲、今後の治安部隊による強権姿勢の高まり、弾圧リスクの高まり
夜間外出禁止令が守られていないこと 統制が効かない不安定な治安情勢の継続
軍関係企業の資金不足・経営難

軍関係者の中の不満分子の発生

経済・物流・治安などの国内情勢の悪化
和平合意のある少数民族による合意離脱や、反政府活動の激化
軍政府による、資源パイプラインの警備強化
メディアの免許取り消し、メディア幹部の拘束 軍に不利益な情報の統制
日用品の買いだめ傾向 生活物資が段階的に枯渇する懸念
銀行の封鎖、ATMを含む通貨不足

現地職員への給与支払いへ懸念

現金所持者に対する犯罪増加の懸念
10 スト・デモ参加者の解雇 民衆の不満増幅の懸念

 

日系企業における「有事の判断および対応」と一言で言っても、実際に何の基準をもって行うのかは難しい。我々、危機管理会社における有事判断の場合、政府の出す危険レベルのようにはっきり区分されるものではなく、常に総合的に判断が行われる。この判断は、現地法人の所在地や、駐在員の行動範囲などによっても変わる。駐在者に対する判断として、緊急退避なのか、籠城なのか、または警備強化支援を前提にした滞在なのか、今後の事態悪化の要因を分析しながら、対応を考える必要がある。

多くの現地法人は、日本大使館や総領事館との連絡を密にしており、現地での最新の安全対策情報を得ている。有事の対応を普段から準備している一部の企業においては、臨時航空機の手配の動きも出てきている。どのような行動の選択肢をとるとしても、現地の邦人コミュニティー内の連携が必須となることを念頭に置きたい。

また、今回、コロナ禍で軍事クーデターが発生し、複合リスクが顕在化した。世界における抗議活動の火種は、ミャンマーにおける軍事クーデター以外にも多数存在しており、また自然災害の脅威なども考えた場合、複合リスクは常に起こり得ることとして想定しておきたい。刻々と変わるミャンマー情勢、そして世界で発生するその他のリスクに対しても、海外危機管理を専門とするコンサルティング会社の情報なども活用しながらご対応いただきたい。

参考

軍事クーデター発生当初の当社レポート

損保ジャパンRMレポート Issue214

ミャンマーにおける軍事クーデター ~日本企業への影響と対策~

https://image.sompo-rc.co.jp/reports/r214.pdf 

 

*1 参考:外務省海外安全ホームページ ミャンマー スポット情報

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2021C042.html 

花田 学

リスクマネジメント事業本部
BCMコンサルティング部

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主任コンサルタント

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