情プラ法(情報流通プラットフォーム対処法) 施行で強まる企業SNSの対策とは(2025年9月1日掲載)

2025年9月1日

クライシスマネジメントコンサルティング部
クライシスコミュニケーショングループ

シニアコンサルタント

早坂 豪

情プラ法(情報流通プラットフォーム対処法) 施行で強まる企業SNSの対策とは(2025年9月1日掲載)

1.SNSでの誹謗中傷対策の強化背景と法整備

インターネット上やSNSでの誹謗中傷対策の強化を目的として、202541日に情報流通プラットフォーム対処法(通称:情プラ法)が施行された。

これまで、「プロバイダー責任制限法」と呼ばれていた法律を基に、プラットフォーム事業者(一定の要件を満たす大規模プラットフォーム事業者)の責任を明確にし、被害者救済を現状に即した形で強化した法律である。この法律により、増大する情報サービスやSNSサービスを提供する大規模プラットフォーム事業者には、複数の対策が義務付けられるようになった。

 

具体的には、SNS上で誹謗中傷の投稿に対する削除要請に対応できるよう、大規模プラットフォーム事業者は投稿削除の申出窓口や手続きの整備のほか、削除基準の公表や、削除申し出を受けてから7日以内に削除対応の可否判断を行い、申し出者へ通知をしなければならない。この取り組み は国内だけでなく諸外国でも進行しており、また未成年の利用・閲覧を制限する法案が出ている国もある。

各国の取組み

取組み・関係する法案
日本 情報流通プラットフォーム対処法
ヨーロッパ圏 デジタルサービス法(DSA
オーストラリア

オンライン安全法(Online Safety Act 2021)、

16歳未満のSNS禁止を定めた改正法案は2025年より施行 等
アメリカ

通信品位法(Section230)で広く免責

子どものSNS利用規制については州レベルで制定

2.情プラ法に基づいた要請の動き

20255月には兵庫県が情プラ法に基づき、不適切な動画や投稿が掲載されている大規模プラットフォーム事業者2社に対して削除要請を行ったことが報じられている。また6月には、参院選の公示前に総務大臣の閣議後記者会見で、プラットフォーム事業者等への偽・誤情報対策要請が報道された。対策要請の対象となったのは、ソーシャルメディア上の課題への対策を強化する業界団体と、業界団体に加盟していないものの5月に情プラ法の規制対象として指定された大規模プラットフォーム事業者である。これらの動きは今後、企業側の実際の運用と法の実効性に対する指針の一つとなるだろう。

3.リテラシーの向上に向けた取組み

国や自治体はSNSやネットリテラシー向上の取組みも進めている。総務省が提供する「DIGITAL POSITIVE ACTION」では、親子で学べるリスク対策コンテンツを無料で公開していたり、鳥取県では、小学生チームが考案した「と・り・の・か・ら・あ・げ※1」というSNSトラブル防止標語を定め、青少年の健全な育成を目指した活動も行っている。このような活動が社会に広く普及することも期待される。

※1子どものSNSトラブル防止標語『とりのからあげ』

ともだちがきずつく事をしない
りよう(利用)時間を決めよう
のせない個人情報
かきん(課金)しない
らいん(LINE)は相手の事を考えて送信
あ(会)わないSNSで知り合った人
げーむ(ゲーム)ソフトの年齢制限を守る

出典:青少年鳥取県民会議 https://www.pref.tottori.lg.jp/294961.htm

4.SNSリスクは「防災訓練」のように未然の対策を

リテラシーの向上は、若年層だけでなく、SNSを管理監督する立場にある経営者や管理職にも必要である。国内のSNSサービスは誕生から20年以上経っており、今や企業のコミュニケーション活動の中でも無視できない情報発信サービスとなった。

時代とともに変化する、ネットコミュニケーション・SNSサービスの誕生や動き

黎明期(198090年代) パソコン通信(BBS)、会員制サービス、巨大ネット掲示板等の誕生
2000年代前半~ ブログの浸透、国産SNSの登場と普及(mixiGREEなど)
2000年代中~後半 海外SNSの日本上陸(FacebookYouTubeTwitterMySpaceなど)
2010年代~

写真や動画、メッセージ機能に特化したSNSサービスの開始

(インスタグラム・SnapchatTikTokなど)

2020年代~

音声SNS(Clubhouse)や位置情報共有アプリのサービス、派生版SNSThreads等)の登場、TwitterからXへの変更

SNSを利用していない管理職もいるが、SNSリスク管理を担当者に任せるだけでは不十分であり、企業や社員による問題が発生した際に組織的に迅速に対応できるかが問われる。

 

防災訓練は年に一度行われるのに対し、ネット炎上や誹謗中傷に対する対応は問題発生後に行われがちで、初動の遅れが企業活動に重大な影響を及ぼすこともある。リスクを軽減するためには、事前の「備え」と「初動」が重要で、社内でのディスカッションやSNSリスクに関する書籍をミーティングの場で読み合うことも役立つ。問題が発生する前に備えることは「防災訓練」と同じであり、炎上や誤情報が広がる現代においては、企業や社会のあらかじめの「備え」を実行することが必要不可欠。企業の健全なる事業活動継続のためには、リスク対策のサービスだけでなく、働く一人一人の意識向上や外部で起きた炎上事象※2に対する迅速な「初動」こそがカギとなるであろう。

※2 会社外での出来事がSNS上に持ち込まれて炎上する事象(例:従業員の不適切行為や言動が特定され、SNS上に広がるケースなど

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参考資料

[1] 兵庫県, 「県保有情報の発信・拡散に関するご理解とご協力のお願い」, 更新日2025-05-29,
   https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk28/sakujyo.html

[2]「兵庫県、漏洩した県保有情報の削除要請 事業者2社に」, 日本経済新聞,  2025-05-27, 日本経済新聞電子版
[3]「参院選の偽情報対策、業界団体に要請 総務相「事業者に社会的責任」, 日本経済新聞, 2025-06-27, 日本経済新聞電子版

早坂 豪

クライシスマネジメントコンサルティング部
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