イベントリスクマネジメントとは――過去の事故から学ぶべきこと

全社的リスクマネジメント NEW

2024年6月25日

大阪支店 リスクエンジニアリンググループ

上級コンサルタント

西岡 友子

2020年からの3年間は新型コロナウイルス感染症の流行で様々なイベントが中止された。20235月に新型コロナウイルス感染症が第五類に移行して1年が経過し、以前のように様々なイベントが開催され、人々が集まって同じ時間や空間を共有するようになった。

国内では、日本国際博覧会(2025年)、東京2025世界陸上競技選手権大会(2025年)、第20回アジア競技大会・第5回アジアパラ競技大会(2026年)、2027年国際園芸博覧会(2027年)や新型コロナウイルス感染症で延期になっていたワールドマスターズゲームズ2027関西(2027年)などの大きなイベントの開催が予定されている。

1.過去に発生したイベント関連事故

イベントに関連する事故は国内外で発生している。

最も記憶に新しいのは、20221029日に韓国の梨泰院で発生した悲惨な雑踏事故であろう。梨泰院の各店舗が独自に開催するイベントへの参加者などハロウィンを楽しみたい人々が自発的に梨泰院に集まり、狭い空間に極端に人が密集して「群衆雪崩」が発生し、159名が命を落とした。

日本でも毎年ハロウィンの頃に仮装した人々が渋谷に多数集まることが知られている。2018年には若者らが軽トラックを横転させる事故が発生した。2022年、2023年は韓国の梨泰院での雑踏事故を受けて自治体や警察が自粛を呼びかけ警戒態勢を敷いた。

自治体や商工会議所などの団体が主催するイベントでは、2001年に明石市の花火大会で発生した雑踏事故、2013年に福知山市の花火大会で発生した火災事故を覚えておられる方も多いであろう。

2001年720日、第32回明石市民夏まつりにおける花火大会では、会場に向かう歩道橋で雑踏事故が発生し、11名が死亡、247名が負傷した。それ以来、花火大会は開催されていない。花火大会の再開を望む声があがり、昨年11月に市民有志による花火の打ち上げが行われた。

2013年815日に福知山市で開催された第72回ドッコイセ福知山花火大会で火災事故が発生し、3名が死亡、56名が負傷した。以降、同市において相当規模の花火大会は開催されていない。その後、花火大会の再開について前向きな意見が上がり、検討会において花火大会のあり方について議論が行われた。花火大会の開催について反対も含め慎重な意見があったことから、現時点で同市が主催または共催することや実行委員会に参画することは時期尚早と判断したものの、主催者や安全対策などが一定の要件を満たす場合に後援という形で関与することを先日2024515日に発表した。

2.イベントにおけるリスク管理の重要性

福知山花火大会での火災事故を受けて、祭礼、縁日、花火大会、展示会その他の多数の者が集合する屋外イベント会場の防火対策を推進するため、2013年に消防法施行令が、2014年に火災予防条例(例)が改正された。屋外イベント会場等で火気器具を扱う際の消火器の準備や大規模な屋外イベント等のうち、消防長が指定するイベントについては、防火担当者の選任、火災予防上必要な業務計画の作成及び当該計画の提出等が義務付けられた。明石市では花火大会での雑踏事故の再発防止に向け教訓を伝える研修を市職員に対して毎年実施している。

しかしながら、各種イベントにおいて留意しないといけないのは火災事故や雑踏事故だけではない。イベントにおいては、施設・設備の故障、飲食の提供があれば食中毒、自然災害や個人情報漏えいなど様々なリスクが潜在する。ひとたび事故が発生すると、物的損害や被害者への損害賠償に加え、風評被害やイベントの延期や中止による損失が発生する可能性がある。したがって、主催者や運営管理者においては、イベントに係るリスクを網羅的に洗い出してリスクの大きさ(頻度や損害額)を評価し、事故を未然に防止するための予防策の実施や、万一事故が発生した場合の対応策をあらかじめ検討してマニュアルを作成しておくことが肝要である。

3.むすびに

福知山花火大会の火災事故ではガソリンの不適切な取扱いが事故につながったことが指摘されている。筆者は危険物の取扱いについて学んでいるが、もし筆者自身が花火大会の現場で引火性危険物を取り扱う立場だったとして、引火性危険物を適切に取り扱えると100%の確信を持って言い切ることは簡単ではなく、他人事ではないと感じる。起こりうる事故を事前に想定し、事故を起こさないための対策と事故が起きてしまった時の対応を確認したうえで当日に臨むことが必要である。

イベント参加者は楽しい時間を過ごすことを求めてイベントに参加している。イベントの主催者や運営管理者はその期待に応えるために安全や運営上の管理責任を果たしてもらいたい。

参考資料

●明石市, 32回明石市民夏まつりにおける花火大会事故調査報告書,
https://www.city.akashi.lg.jp/anzen/anshin/matsurijiko/tyousa32.html.
(アクセス日:2024-05-27

●福知山市, 花火大会に関する福知山市の考え方,
https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/soshiki/25/59276.html.(アクセス日:2024-05-27

●総務省消防庁, 平成29年版 消防白書,
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h29/chapter1/section1/para2/45984.html.(アクセス日:2024-05-27

西岡 友子

大阪支店 リスクエンジニアリンググループ

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