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地球温暖化による気候変動対策を考える――事業継続のために、何をすべきか
1.はじめに
2025年11月にブラジルで開催された気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)は、気候変動対策の推進と国際協力の促進を目的とした重要な会議である。この会議において、各国は温暖化対策に関する取組みを確認し、資金支援や適応策、技術協力など多岐にわたる具体的な支援内容を共有した。
1997年12月に京都議定書が採択されたことを契機に、12月は「地球温暖化防止月間」として位置付けられ、気候変動問題への取組みは長年継続されてきた。しかしながら、世界は依然として気候変動の進行と向き合っており、その影響は私たちの生活や経済活動に深刻な影響を及ぼし始めている。こうした状況において、企業には迅速な対策が求められている。
本コラムでは、地球温暖化の現状と最新のデータを踏まえ、企業の事業継続に必要な対応策について詳述する。
2.地球温暖化の現状:データが示す深刻な影響
2023年に公表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書によると、人間の活動による温暖化は既に進行しており、今後も温室効果ガスの排出が継続すれば、気温の上昇は避けられないことが示唆されている [1]。
京都議定書に続き、パリ協定などの国際的枠組みにおいて温室効果ガス排出量の削減目標が策定されたものの、多くの国は目標達成に苦戦しており、排出削減の効果は十分に現れていないのが現状である。世界的な取組みの遅れは、各地域に具体的な影響を与え始めている。日本においても、近年、極端な高温や豪雨といった気象の変化を実感する人は多いだろう。
以下では、世界的な温暖化の進行が、より身近な問題として私たちに迫っている現状を、高温と大雨に関する最新のデータを用いて解説する。
① 記録的な高温と熱中症リスク
日本の年平均気温は100年当たり1.40℃の割合で上昇しており、特に2024年は観測史上最も高い気温を記録した [2]。真夏日や猛暑日、熱帯夜の日数も増えている。
自然災害等による犠牲者数のデータを見ると、熱中症による死亡数は、大雨や台風、地震などの死者・行方不明者数を大きく上回っている。特に2024年の熱中症による死亡数は、過去初めて2000人を超え、深刻な状況を示している。
図1 自然災害等による死者・行方不明者数 [3]と熱中症による死亡数 [4]
(データをもとに筆者作成)
台風や地震等の被害も甚大であるが、熱中症も一種の”気象災害”として非常に深刻度を増している。地球温暖化の進行に伴い、今後も熱中症のリスクはますます高まるだろう。
② 強雨頻度の増加
地球温暖化は雨の降り方にも影響を与えている。日本では、1時間降水量80ミリ以上の「猛烈な雨」の発生頻度が、1980年ごろと比べて約2倍に増加した。
図2 全国(アメダス)の1時間降水量80mm以上の年間発生回数
(出典:気象庁ホームページ,https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html)
局地的な大雨は土砂災害や河川の氾濫を引き起こし、都市部においても浸水被害などの都市型水害が深刻化している。 これらの極端現象は、地球温暖化がなければ起こり得なかった可能性も高く、今後の温暖化の進行とともに、さらなる頻発と深刻化が危惧される。企業は、事業活動への影響を考慮し、早急な対策を講じる必要があるだろう。
3. 事業継続のために企業がとるべきリスク対策
地球温暖化が引き起こすリスクは多岐にわたる。そのため、企業の事業活動に及ぼす具体的な影響を多角的に分析し、それぞれの対策を講じることが必要不可欠である。
| 【リスクの具体例】 ● サプライチェーンへの影響:物流の停滞や原材料価格の高騰、調達の不安定化。 ● 従業員の健康リスク:熱中症や感染症の増加、安全な職場環境の確保。 ● インフラと設備の被害:豪雨等による施設の浸水、耐久性の低いインフラの損傷。 |
これらのリスクに備えるためには、まず情報の収集とリスク評価を徹底し、事前に対策計画を策定することが重要である。これにより、リスクの特定と予測に基づく適切な対応策が可能となる。リスクを特定し、その影響度を評価し、適切な対策を講じることで、事業の継続性を高めることができる。
当社では、気候変動に関する様々なリスクから企業を守るためのソリューションを提供している。
「SORAレジリエンス」は、国内外の気象災害情報やグローバルリスクをリアルタイムに収集して一元管理できるツールである。地図上で熱中症警戒アラートの発表状況も確認できるため、危険度の高い場所を把握し、迅速な対応を可能にする。
また、「みまもりふくろう」は、従業員の熱中症リスクをリアルタイムで察知できる機能を備えている。従業員がウェアラブルデバイスを装着して脈拍を測定することで、管理者は危険を素早く察知し、労務管理をサポートする。
これらのツールも積極的に活用し、気候変動に伴うリスクに備えることが、企業の持続可能性を高めるために必要となるだろう。
4. まとめ
地球温暖化の進行に伴い、従業員の安全やサプライチェーン、工場等の設備に関するリスクは一層高まっている。企業は、事業の持続性を確保するためのリスクマネジメント体制を強化し、変化する環境に適応していく必要がある。
当社のソリューションは、貴社の事業継続を支援するための一助となるだろう。ぜひ一度ご相談いただければ幸いである。
デジタルツールを活用した対策をお探しの方へ
参考文献
[1]環境省,「統合報告書の解説資料(環境省)【2023年11月版】」
https://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th/index.html(アクセス日:2025年12月11日)
[2]気象庁,日本の年平均気温
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html(アクセス日:2025年12月11日)
[3]内閣府,令和7年版 防災白書|附属資料2 自然災害による死者・行方不明者数
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r07/honbun/3b_6s_02_00.html(アクセス日:2025年12月11日)
[4]厚生労働省,熱中症による死亡数 人口動態統計(確定数)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/necchusho24/index.html(アクセス日:2025年12月11日)
熊澤 里枝
サービス開発部 リスクプラットフォームグループ
気象予報士 主任コンサルタント
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