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不審者侵入に対する未然防止策と危機対応への備え ~立川市の小学校で発生した侵入暴行事件を受けて~(2025年5月28日掲載)

行政機関・学校 NEW

2025年5月28日

GRCコンサルティング部
危機管理・コンプライアンスグループ

コンサルタント

松原 賢汰

2025年5月8日、立川市内の小学校において、外部から男2人が校舎内に侵入し、教職員5人が負傷する事件が発生した。

この事件の発端は、児童間のトラブルを巡る担任の対応に対する保護者の不満とされている。今回は現場の教職員の尽力もあり、最悪の事態は免れたが、改めて学校の安全管理体制に対する見直しを迫られる結果になった。

そこで本コラムでは、学校における不審者侵入リスクに対して、侵入を未然に防ぐための対策と、万が一侵入された場合の危機対応策について要点を整理する。

1.未然防止の観点から見た不審者侵入リスクへの備え

まず、未然防止の観点から見てみよう。今回の事件を踏まえ、学校が優先的に取り組むべき課題として、外部の者が容易に侵入できない環境づくりが挙げられる。

2023年に文部科学省は、全国の学校38,171校(内訳:国立学校228校、公立学校33,084校、私立学校4,859校)を対象に学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査を実施。その結果、各学校における不審者侵入防止対策の取組状況が明らかになった。

表1 全国の学校を対象にした不審者侵入防止のための対策(一部抜粋)

取組内容 割合
防犯カメラ 64.6%
玄関のインターフォン 60.2%
警備員の配置 8.0%
警備会社との連絡システム 60.3%
警察との連絡システム 28.5%
校内緊急通話システム 54.7%
さすまた 92.2%
36.8%
催涙スプレー 10.9%
防犯ネット 9.1%

(出典:文部科学省「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査〔令和5年度実績〕」[1]

調査結果からも分かるように、防犯カメラの設置は64.6%、玄関のインターフォン設置は60.2%、警備員の配置に至っては8.0%に留まっている。これらの中には一定の予算措置が必要なものもあるが、不審者侵入の抑止力につながる取組みが普及していない現状がある。

また、学校によっては児童等(学生や生徒を含む)のために校門や校舎玄関を常時開放する等、不審者侵入を容易にしている環境が見受けられる。このような設備面の取組みの改善が求められる一方で、運用面の取組みも見直す必要がある。

例えば、来校者の管理である。

●受付で名簿記入・名札着用を義務付ける

●教職員が見慣れない人物を校内で見かけたら必ず声をかけて確認する習慣を持つ

●校内巡回を強化することもポイント

人の目が行き届く環境を整えることは不審な行動に対する抑止力となり、また、万が一事件が発生した際にも、迅速な対応に移行できるメリットがある。

2.不審者侵入を想定した危機対応への備え

次に危機対応の観点から見てみよう。今回の事件では、現場の教職員の連携により最低限の被害で済んだが、皆さんの学校で同様の事件が発生した場合、児童等への被害を防ぎ、安全を確保できる体制が整っているだろうか。

危機対応に関する取組みで最も大切なことは、万が一の危機発生を想定した事前準備である。

その中の1つの取組みとして、危機発生時の対応策を定めた危機管理マニュアルの整備が挙げられる。

学校には従来から火災や地震を想定した対応要領や避難経路図が整備されているが、これらに加えて、不審者対応を含めた学校で想定される危機全般に対応できるような包括的な危機管理マニュアルの整備が求められる。

具体的には、

●危機発生時の現場の初動対応や危機発生時から収束までの対応手順

●学校内の関係者への連絡フロー

●児童等の避難場所

●警察や消防への通報手順

●保護者への緊急連絡方法  等

細部まで決めておくことが望ましい。

また、これらは定めるだけではなく、定期的に点検とアップデートを行うとともに、教職員全員でマニュアルを共有し、児童等も含めて定期的に訓練を実施することでマニュアルの実効性を確認することが重要である。

3.むすびに

今回の事件を受けて、皆さんの学校でも今一度、未然防止策や危機対応への備えについて現状の取組みを見直していただきたい。

加えて、不審者侵入リスクを高めている課題(設備面・運用面)の洗い出しや、不審者侵入につながる恐れのあるリスクの洗い出し、さらにはそれを踏まえたリスク対策等、学校で抱えるリスク全般を見直す機会にしていただきたい。

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[1] 文部科学省「学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査〔令和5年度実績〕」(https://anzenkyouiku.mext.go.jp/report-gakkouanzen/data/r05/ope_dev05-3.pdf アクセス日:2025-05-16)

松原 賢汰

GRCコンサルティング部
危機管理・コンプライアンスグループ

コンサルタント

このコンテンツの著作権は、SOMPOリスクマネジメント株式会社に帰属します。
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※コンサルタントの所属・役職は掲載当時の情報です。