全国瞬時警報システム(Jアラート)による情報伝達――緊急時に備えて

行政機関

2017年11月20日

リスクマネジメント事業本部
BCMコンサルティング事業部

社会公共グループ グループリーダー

梅山 吾郎

はじめに

北朝鮮の軍事的な動きは、わが国はもとより、地域・国際社会の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっている。また、今年に入り北朝鮮は過去に例を見ない頻度で弾道ミサイル*1を発射し、平成28年8月以降、弾道ミサイルの弾頭部分が日本の排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)*2内に落下する事案も発生している。本稿では、国が弾道ミサイル発射事案等の緊急情報を情報伝達するシステムである全国瞬時警報システム*3(以下、Jアラートという。)を知ることを目的とし、その内容を概説する。

1. 北朝鮮から発射された弾道ミサイルの概要

北朝鮮から発射された弾道ミサイルは平成29年1月から9月末時点の間に10発以上が発射され、我が国の上空を太平洋に向けて通過する事案は8月と9月に2件発生している。平成29年に発射された弾道ミサイルの概要をまとめた(表1)。

表 1 平成29年に発射された弾道ミサイルの概要
日時 発射地点 方向 状況
9月15日
6時57分
1発 北朝鮮西岸の順安(スナン)付近 東北東 午前7時4分頃から6分頃にかけて北海道渡島半島付近及び襟裳岬付近の上空を太平洋に向けて通過、その後、午前7時16分頃、襟裳岬の東約2,200kmの太平洋(我が国の排他的経済水域(EEZ)外)に落下したものと推定。飛翔距離約3,700km、最高高度約800kmであったと推定
8月29日
5時58分
1発 北朝鮮西岸の順安(スナン) 北東 午前6時5分頃から7分頃にかけて北海道渡島半島及び襟裳岬の上空を太平洋に向けて通過、その後、午前6時12分頃、襟裳岬の東約1,180kmの太平洋(我が国の排他的経済水域(EEZ)外)に落下したものと推定。飛翔距離約2,700km、最高高度約550kmであったと推定
7月28日
23時42分
1発 北朝鮮内陸部の舞坪里(ムピョンニ)付近 北東 3,500kmを大きく超える高度に達し、約45分間、約1,000km飛翔し、北海道積丹半島の西約200km、同奥尻島の北西約150kmの我が国の排他的経済水域(EEZ)内の日本海上に落下
7月4日
9時39分
1発 北朝鮮西岸の亀城(クソン)付近 2,500kmを大きく超える高度に達し、約40分間、約900km飛翔し、我が国の排他的経済水域(EEZ)内の日本海上に落下
5月29日
5時40分
北朝鮮東岸 日本海 我が国の排他的経済水域(EEZ)内に落下
5月21日
16時59分
1発 北朝鮮内陸部の北倉(プクチャン)付近 約500km飛翔し、北朝鮮東岸から東に約350kmの日本海上に落下
5月14日
5時28分
1発 北朝鮮西岸の亀城(クソン)付近 東北東 2,000kmを超えた高度に達し、30分程度、約800km飛翔し、北朝鮮東岸から約400kmの日本海上に落下。なお、落下したのは、我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定
4月29日
5時30分
1発 北朝鮮内陸部の北倉(プクチャン)付近 約50km離れた北朝鮮内陸部に落下
4月16日
6時21分
1発 北朝鮮東岸の新浦(シンポ)付近 発射したが直後に爆発
4月5日
6時42分
1発 北朝鮮東岸の新浦(シンポ)付近 北東 約60km飛翔し、北朝鮮の東岸沖に落下
3月6日
7時34分
4発 北朝鮮西岸の東倉里(トンチャンリ)付近 それぞれ約1,000km飛翔し、秋田県男鹿半島から西に約300~350kmの日本海上に、そして、そのうち3発は我が国の排他的経済水域(EEZ)内に落下
2月12日
7時55分
1発 北朝鮮西岸の亀城(クソン)付近 約500km飛翔し、北朝鮮東岸から東に約350kmの日本海上に落下

(出典:防衛省・自衛隊ウェブサイト-弾道ミサイル防衛(BMD)について(http://www.mod.go.jp/j/approach/defense/bmd/(アクセス日:2017-10-02)をもとに当社作成)

2. Jアラートの仕組み

北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する場合、弾道ミサイルは極めて短時間*4で日本に飛来することが予想される。この際、国は、弾道ミサイル発射事案等の緊急情報を、Jアラートを活用し、市町村の防災行政無線や緊急速報メール等により、関係のある地域の住民に直接、音声等で情報伝達する。情報の伝達体制は以下のとおりである(図1)。
なお、地方公共団体等の関係機関にはJアラートと併せて、緊急情報ネットワークシステム(Em-Net:エムネット) *5 により緊急情報が文字情報で伝達され、情報伝達を受けた各機関は、その情報も含めて対応を行うことになる。

図 1 Jアラートによる緊急情報の伝達体制
(出典:Jアラートによる緊急情報の伝達体制の強化(平成29年度行政事業レビュー「公開プロセス」平成29年6月22日)消防庁防災課国民保護室(http://www.soumu.go.jp/main_content/000491609.pdf(アクセス日:2017-10-02 ))

また、Jアラートは、時間的に猶予のない緊急事態の発生を国民に伝え、迅速な避難行動を促すことを目的としており、25情報を配信する。そのうち、弾道ミサイル情報を含む11情報については、休日・夜間などの地方公共団体の職員体制に関わらず住民に情報を伝達することが可能なように原則、市町村防災行政無線(同報系)等を自動起動させる設定となっている。配信される情報の種別は以下のとおりである(表2)。

表 2 Jアラートで配信される情報

(出典:Jアラートによる緊急情報の伝達体制の強化(平成29年度行政事業レビュー「公開プロセス」平成29年6月22日)消防庁防災課国民保護室(http://www.soumu.go.jp/main_content/000491609.pdf(アクセス日:2017-10-02))

3. Jアラートによる情報伝達の内容

私たち国民は、国等からの情報を踏まえて速やかな行動が必要となる。ここでは、弾道ミサイル発射時にJアラートがいつ使用され、どのような情報伝達がなされるのかその内容を概説する。(図2)
まず、弾道ミサイルが発射された際に、すべての場合でJアラートが使用されるとは限らないことを理解しておくことが必要である。Jアラートは、弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性又は領土・領海を通過する可能性がある場合に使用される。逆に、日本の領土・領海に落下する可能性又は領土・領海を通過する可能性がないと判断した場合は、Jアラートは使用されない。
なお、日本の排他的経済水域(EEZ)内にミサイルが落下する可能性がある場合は、Jアラートは使用されないが、船舶、航空機に対して迅速に警報が発せられる*6

次に、Jアラートによる情報伝達は図2に示すように、(1)日本に落下する可能性があると判断した場合、(2)日本の上空を通過した場合、(3)日本の領海外の海域に落下した場合に分けて流される*7。現在、送信される予定のメッセージ内容は「内閣官房国民保護ポータルサイト」では以下のとおりとなっている(図3)。

図 2 情報伝達の基本的な流れ 
(出典:北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合における全国瞬時警報システム(Jアラート)による情報伝達について(http://www.kokuminhogo.go.jp/kokuminaction/jalert.html(アクセス日:2017-10-02))

図 3 メッセージの内容 
(出典: 北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合における全国瞬時警報システム(Jアラート)による情報伝達について(http://www.kokuminhogo.go.jp/kokuminaction/jalert.html(アクセス日:2017-10-02))

このメッセージは、よりわかりやすく伝えるために常に改善がなされているので、適宜確認が必要である。例えば、8月29日に弾道ミサイルが発射された際のメッセージ(図4)では、「頑丈な建物や地下に避難して下さい」という内容が情報伝達されたが、避難場所として頑丈な建物が近くにない地域もあることなどから、現在は「建物の中、又は地下に避難して下さい」とメッセージの改善がなされている*7
なお、Jアラートによる情報伝達は、状況に応じて送信されるため、現在予定しているメッセージが全て送信されるとは限らない。また、メッセージは状況に応じ、変更する可能性があることや、自衛隊によるミサイルの迎撃の状況等により情報伝達の流れが変わる可能性もあることを知っておくことが必要である。

図 4 8月29日に配信されたメッセージ 
(出典:北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合における全国瞬時警報システム(Jアラート)による情報伝達について(http://www.kokuminhogo.go.jp/kokuminaction/jalert.html(アクセス日:2017-10-02))

4. 弾道ミサイル落下時の避難行動

日本に落下する可能性があると判断された場合、避難の呼びかけが出されるが、私たちはどのように避難行動をとるべきであろうか。
弾道ミサイル落下時の行動に関するQ&A*6 の内容を踏まえると、屋内避難を行う場合は、できるだけ近傍のコンクリート造り等の堅ろうな施設や建築物の地階、地下街、地下駅舎等の地下施設に避難することが必要となる。また、屋内であれば、爆風で壊れた窓ガラスなどで被害を受けないよう、できるだけ窓から離れ、窓のない部屋に移動することも必要であろう。
ここまで、Jアラートの仕組み、弾道ミサイル発射時にJアラートを使ってどのような情報が伝達されるのか、そしてどのような避難行動を取るべきかを整理してきた。しかし、そうした情報伝達の仕組みや避難行動のための知識があっても実際の行動が伴わなければ、自らの安全を守ることはできない。

自らの安全を守るために、私たちは弾道ミサイル発射時の対応を自分事として捉え、自分であればどのように行動すべきかを考えて訓練しておくことが必要ではないだろうか。
例えば、まずは前述したように、弾道ミサイル発射時にどのような音声情報やサイレン音が流されるのか、またどう行動すべきなのか知識レベルで理解したうえで、家庭であればどこが一番避難するのに適しているのか、企業であれば、多くの従業員をどこにどのようにして短時間で避難させるのかなどについて、普段からみんなで話し合い、実際に避難訓練を行うことが必要であろう。また、訓練の結果、何が課題だったのか、それをどう解決していけばよいのか振り返り、対応を改善していくことが必要である。現在、多くの自治体では弾道ミサイル発射を想定した訓練が行われているが、これに参加してどのように対応すべきかを具体的に検討しておくことが求められよう。

鉄道、バスなどの事業者では、Jアラートによる情報伝達が行われた場合の対応内容を公開するなどしている(表3)。

表 3 全国瞬時警報システム(Jアラート)発令時の鉄道・バス事業者の対応(例)

対応の内容
  • 飛来する弾道ミサイルに注意が必要な地域の列車の運転を見合わせる。(鉄道)
  • 運行中のバスは安全に停車可能な場所へ停車する。高速道路上を走行中は速度を落とし近くのSA・PAにて停止する。(バス)
  • 運行前のバスについては、安全が確認されるまでは運行しない。(バス)
  • 安全が確認できた後、停車していたバスや、発車していないバスの運行を再開する。(バス)
  • ホームページ上、バスロケーションシステム上での緊急時のバス運行情報のお知らせが遅れる場合があることを説明する。(バス)

(出典:WEBサイトの公開情報をもとに当社作成)

 

また、電気・ガス事業者、運輸事業者、放送事業者などの指定公共機関は、日本にミサイルが着弾する武力攻撃事態の場合に関して、国民保護法に基づき必要な措置を定めている。一般的なオフィス、工場、店舗などでは、本稿で紹介した避難に関する行動をそれぞれの業種に当てはめて対応することが必要であり、自社の従業員や顧客の人命安全を第一に考えて対応方法を検討しておくことがもとめられるであろう。

 

*1 弾道ミサイル:放物線を描いて飛翔するロケットエンジン推進のミサイル。長距離にある目標を攻撃することが可能。速度が速い。弾道ミサイル防衛、平成20年3月、防衛省、
http://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/19/sougou/sankou/02.pdf(アクセス日:2017-10-02)

*2 排他的経済水域:領海の基線からその外側200海里(約370km)の線までの海域(領海を除く。)並びにその海底及びその地下。なお、排他的経済水域においては、沿岸国に以下の権利、管轄権等が認められている。
   1.天然資源の探査、開発、保存及び管理等のための主権的権利
   2.人工島、施設及び構築物の設置及び利用に関する管轄権
   3.海洋の科学的調査に関する管轄権
   4.海洋環境の保護及び保全に関する管轄権
領海等に関する用語。海上保安庁ウェブサイト、
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/ryokai/zyoho/msk_idx.html(アクセス日:2017-10-02)

*3 Jアラート:弾道ミサイル情報、津波警報、緊急地震速報など、対処に時間的余裕のない事態に関する情報を国(内閣官房・気象庁から消防庁を経由)から送信し、市町村防災行政無線(同報系)等を自動起動することにより、国から住民まで緊急情報を瞬時に伝達するシステム。Jアラートの概要、消防庁ウェブサイト、
http://www.fdma.go.jp/html/intro/form/pdf/kokuminhogo_unyou/kokuminhogo_unyou_main/J-ALERT_gaiyou_h28.pdf(アクセス日:2017-10-02)

*4 平成28年2月7日に、北朝鮮西岸の東倉里(トンチャンリ)付近から発射されたミサイルは約10分後に、発射場所から約1,600km離れた沖縄県先島諸島上空を通過している。北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合における全国瞬時警報システム(Jアラート)による情報伝達に関するQ&A、内閣官房国民保護ポータルサイト、
http://www.kokuminhogo.go.jp/shiryou/nkjalertqa.html(アクセス日:2017-10-02)

*5 エムネット:行政用専用回線で都道府県・市町村と必要な情報を送受するシステム。メールと異なり、メッセージを強制的に相手側に送信して迅速・確実に情報を伝達する。国民保護関係資料、平成18年7月、内閣官房、http://www.fdma.go.jp/html/data/tuchi1806/pdf/180630-2siryou1.pdf(アクセス日:2017-10-02)

*6 弾道ミサイル落下時の行動に関するQ&A、 http://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/290421koudou3.pdf(アクセス日:2017-10-02)

*7 北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合における全国瞬時警報システム(Jアラート)による情報伝達について
http://www.kokuminhogo.go.jp/kokuminaction/jalert.html(アクセス日:2017-10-02)

梅山 吾郎

リスクマネジメント事業本部
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社会公共グループ グループリーダー

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