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  • 熱中症対策 “最前線” ~現場からのレポート~ 第2回

年間猛暑日・真夏日の最多記録を各地で更新した2023年。日本の夏(68月)の全国の平均気温は、1898年の統計開始以降で最も高くなったそうです。地球温暖化が進行するなか、体が暑さに慣れていない45月から熱中症リスクへの対応が迫られています。

「安全はすべてに優先する」と考えるJFE鋼材株式会社 レベラー事業部では、基本的な熱中症対策に加えて、作業者の体調変化をリアルタイム把握して熱中症リスク管理する「労務・熱中症管理サービス“みまもりふくろう*1”(以下、本サービス)」を導入しています。

今回は、同社において、本サービスを導入した経緯や熱中症対策の取り組み状況等をご紹介します。

 

*1)みまもりふくろう:

リストバンド型デバイスにより、作業者の脈拍や位置情報をリアルタイムに計測し、労務管理をサポートするウェアラブルIoTサービス

参照Webサイト:https://www.sompo-rc.co.jp/services/view/184

 


JFE鋼材株式会社

鋼板の剪断加工・溶接加工技術に強みをもち、トラック用フレーム等を生産するレベラー部門、圧延鋼材を製造する厚板部門、機械メーカー等へ各種部品部材を供給する産機部門、不動産賃貸・管理を行っている資産経営部門を運営。

本サービスは、レベラー部門でご採用いただきました。

 



 

“2年連続で熱中症が発生” 頑張りすぎてしまう現場作業者

本サービス導入前の熱中症予防への取り組み状況や課題についてお聞かせください。

 

(小川さん)

これまではJFEグループの方針に則って、注意喚起の資料を配布し、映像を用いた研修を行うことに加えて、冷水を自由に補給できる職場環境を整えるなど、熱中症の防止に努めています。また、WBGT計を導入して職場環境の把握と安全意識の醸成を図っています。

 

しかし、2021年、2022年は1名ずつの作業者が熱中症になりました。熱中症になった作業者には、建築業界向けの熱中症対策講習会に参加するなど再発防止対策をすすめています。また、熱中症対策推進委員として社内で啓蒙活動を担ってもらっています。

 

ウェアラブルデバイスを用いた熱中症予防を検討されたのはなぜでしょうか。

 

(伊藤さん)

研修や職場環境整備、WBGT計の導入をはじめとしたさまざまな対策を行ってきたものの、熱中症になる作業者がいました。WBGT計は環境の把握などに有効ですが、業務中に頻繁に確認することが難しく、またWBGTと作業者自身の体調との関係を考慮することが必要になり、作業者一人ひとりが活用するには至っていないと考えられました。

 

当社は、安全はすべてに優先すると考えていますので、より実効的な対策を検討したところ、作業者個々人の体調をリアルタイム把握して管理者が注意喚起する必要性を認識し、ウェアラブルデバイスを用いて熱中症予防に取り組むこととしました。

 

本サービスの導入に至った経緯や考慮されたことをお聞かせください。

 

(伊藤さん)

熱中症で体調不良になった作業者は、気分が悪くなるギリギリまで仕事をして頑張ってしまっていたようです。そのような姿勢をもつ作業者に対して、自分自身に熱中症アラートを伝えるようなスタンドアローン型のウェアラブルデバイスを供与しても、アラートを振り切って仕事を優先したり、見逃したりすることが懸念されました。

 

そこで、管理者が作業者の体調を把握できるように、作業者の体調データをクラウドに保存し、管理者にアラートを発出して、管理者から作業者に直接声をかける仕組みが有効であると考えました。

 

(澁谷さん)

熱中症防止サービスやウェアラブルデバイスをインターネットで調査し、複数検討しました。スタンドアローン型の熱中症予防用ウェアラブルデバイスは、価格は安いのですが、管理者が作業者の体調を把握することができず、導入の対象外としました。

 

作業者のデータがクラウド保存され、管理者がデータ確認できるサービスのなかでも、着用しない時期は費用がかからない「みまもりふくろう」がコスト的にリーズナブルでした。

当社ではこのようなサービスを初めて導入することになり信頼性がわからないので、最初から大きな投資を必要としない本サービスは評価できました。

 

【みまもりふくろうの特長】

   ・ウェアラブル端末(活動量計):13,000円(税抜)/台 

   ・利用料金(月額費用):活動量計1台当たり、2,000円(税抜)

               ※活動量計が10台以下の場合は、一律20,000円(税抜)

   ・最低利用期間:3カ月                  

 

 

“熱中症リスク管理デバイスはヘルメットや手袋と同じ保護具” 

本サービスのウェアラブルデバイスを着用されている方々の職務内容を教えてください。

 

(小川さん)

製品の出荷を担当している協力会社の作業者に着用してもらっています。玉掛け作業やクレーン操作などをしており、製品ヤードをかけめぐっています。

 

作業場所はスポットクーラーなどで環境整備を進めていますが、半屋外のため、冷却には限界があります。そのため、作業者の体調を把握できるみまもりふくろうは、ヘルメットや保護メガネ、手袋、安全帯と同等の働くうえでの必須ツールとなっています。

 

協力会社の作業者が着用するとはいえ、費用は当社で負担しています。工場敷地内の安全管理の責任を当社が負っているからです。協力会社も仲間として労働災害ゼロを実現していきます。

 

管理者による作業者の体調確認はどのようにされていますか。

 

(澁谷さん)

管理者3人が自席のPCで常時監視しています。管理画面の着用者アイコンが、警戒状態を示す“赤色”に変わったりすると、現場リーダーに注意喚起したり、作業者に直接に声を掛けたりしています。

本サービスの管理画面(イメージ)

 

(伊藤さん)

本サービスのダッシュボードは複数あり、直近8時間の体調変化を示すデータも有効でした。時間帯や作業内容の傾向がわかり、警戒状態が長い作業者に声掛けなどしています。

 

身体負荷の少ない作業の際は脈拍が下がり、暑い作業場では脈拍が上がるということがリアルタイムで把握でき、デバイスの精度は高いと感じています。

直近8時間のデータで作業者個々人の体質と作業内容を把握

 

 

本サービス導入後の熱中症は“ゼロ”に 

本サービス導入後、熱中症の発症状況に変化はありましたか。

 

(小川さん)

アラートが出ると作業者に注意喚起できたので、熱中症防止に役立っています。

2023年、「みまもりふくろう」を着用していた作業者の熱中症はゼロでした

会社として作業者の安全を守ろうとしていることが示され、職場の安全意識も高まっていると感じます。

作業者が毎日通過する事務所棟入口に安全に関する表示を行っている

 

本サービスについてのご意見をお聞かせください。

 

(伊藤さん)

作業内容が変わるとリアルタイムで脈拍数が変化しており、精度は高く、満足しています。

当社では工場が広いので、場所の把握もできれば有効性が上がると考えています。GPSの精度がさらに高まるよう期待しています。

 

(澁谷さん)

どうしてもデバイスが汚れてしまうことがあるので、メンテナンスしやすい構造のデバイスであればより使いやすくなると思います。

 

(小川さん)

改善点はあるけれども、非常に熱中症予防の効果があるため、継続して使用していきたいと考えています。今後もさらなるサービスの向上が図られることを期待しています。

 

 

<編集後記>

「ここからインフラを支える鋼材製品が出荷されるのだな」と大きな工場を目の間にして圧倒されながらも、「安全」「災害ゼロ」「仲間を守る」という熱い使命と具体策を詳細かつ丁寧にご説明いただくことができました。なかでも、「みまもりふくろうはヘルメットと同じ」という言葉には、本サービスを提供する私どもの胸も熱くなりました。ありがとうございました。

今後も、労働安全衛生の徹底、災害ゼロを大前提に、より一層の事業の発展を願っております。