「転ばぬ先の杖」、それがリスクマネジメント

全社的リスクマネジメント

2017年10月23日

リスクマネジメント事業本部
ERM事業部

ビジネスリスクグループ 上級コンサルタント

吉田 勇気

少し時間が過ぎてしまったが、9月1日といえば「防災の日」である。防災の日とは、災害大国ともいわれる日本において、企業や家庭が台風、津波、地震等の自然災害への認識を深め、それらの災害への準備をするための日として制定されたもので、9月1日という日付は、過去に極めて甚大な被害をもたらした関東大震災の発生日に由来している。ちなみに、8月30日から9月5日までの1週間は、防災の日に関連して「防災週間」とされている。今年も全国各地で防災の日にちなんで、多様な防災訓練や防災知識を普及するための行事が行われた。例として、関東地方では複数の地方自治体が合同で、大規模地震を想定した訓練を実施。訓練には、国の機関や地方自治体等が参加し、救出救助訓練や住民参加型訓練のほか、災害対策用無線システムの展示・デモンストレーション等が行われたようだ。企業においても、防災の日や防災週間に安否確認訓練や避難訓練等、様々な訓練が実施されており、こうした訓練をきっかけとして、自然災害をはじめとした各種リスクへの対応、すなわちリスクマネジメントへ取り組む必要性を改めて認識した企業も少なくないだろう。そこで、この機会に企業におけるリスクマネジメントについて、振り返ってみようと思う。

企業が事業活動を行うに当たっては、台風、地震、津波のような自然災害のほか、火災・爆発、設備・機械の故障、サイバー攻撃、人材採用困難、従業員の精神的疾病等、様々なリスクが潜在する。そして、これらのリスクは顕在化する時期や場所等の予測が困難であるとともに、顕在化した場合、時として企業の存続にかかわる事態を引き起こす可能性を持つ。リスクマネジメントとは、概括すると、これらのリスク顕在化を回避したり、リスク顕在化時の影響を低減したりする取組のことをいう。リスクマネジメントにおいて、まずもって重要なのは、企業として自社に潜在しているリスクをできるだけ抜け漏れなく洗出し、認識することである。自社にどのようなリスクが潜在しているか分からなければ、リスクへの対策を打ちようがないのは言うまでもないだろう。 
では、どのようにリスクを認識するのか?いくつか考え方を紹介すると、
(1)自社でこれまでに経験したリスクやヒヤリハット事例等をもとに認識する。 
(2)自社では経験がないが、報道等をもとに外部で顕在化したリスクを参考事例とする。 
(3)自社でも外部でも顕在化したことがないリスクを想像する。 
ことが挙げられる。このうち、最も難しいのは「(3)」のこれまで顕在化したことがないリスクの認識である。このようなリスクについては、顕在化してはじめて企業に認識され、その対応が後手にまわる場合が多い。企業として、顕在化したことがないリスクを認識するためには、自社の潜在リスクについて意見交換を行う場を設置する、定期的に社内でリスクマネジメント研修会を実施する、「こうしたリスクがあるかもしれない」という予見可能性を考える習慣を社内に浸透させる等の取組を通じ、リスク感性を上げることが有効な手段の一つとなる。そして、このような取組の結果、潜在するリスクが認識できれば、未然防止策を打つことで顕在化を防ぐことができるかもしれない。また、万一、リスクが顕在化した場合においても、認識したリスクへ事前に対策を打っておけば影響を低減できるかもしれないし、少なくとも全くリスクを認識していない時よりもはるかに冷静に対処することができるだろう。このように企業が潜在リスクとうまくつきあっていくことこそが、リスクマネジメントの実践だと言える。

近年、あらゆる情報等がネットワークを通じて自由にやりとり可能となるIoTや、コンピューター自らが学習し一定の判断を行う人口知能(AI)等の技術革新が進んでおり、将来的には産業構造や就業形態が劇的に変化する可能性があると言われている。今後、このような時代が到来するのであれば、新たなリスクの出現等により、企業の潜在リスクが変化する可能性があるのは想像に難くない。そして、こうしたリスクの変化に対応するために、磨き上げたリスク感性をもとに、いち早く新たなリスクを認識し、リスクに対して先手を打つことが、今後の企業にはこれまで以上に求められるかもしれない。

古いことわざで「転ばぬ先の杖」というものがあるが、昔、今そして将来と、いつの時代も変わらず「転ばぬ先の杖」なのだと、そんな風に感じている。

吉田 勇気

リスクマネジメント事業本部
ERM事業部

ビジネスリスクグループ 上級コンサルタント

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