くり返される危機! その時、企業の対応は?

危機管理

2017年9月26日

リスクマネジメント事業本部
危機管理・食品事業部

上級コンサルタント

古字 朗人

2000年代以降、企業はリスクマネジメントに注力するようになり、昨今ではERM(Enterprise Risk Management : 全社的リスクマネジメント)のPDCAも定着してきた。とはいえ、現代のような複雑で不確実な時代に企業活動を遂行する以上、リスクをゼロにすることはできない。ヒューマンエラー、想定外の外部要因、企業に根付いた文化・風土等に起因して、企業にでは様々な危機事態が生じている。昨今でも重大な製品事故、不祥事など、報道やSNS(Social Networking Service)で発信される事故・事件には枚挙に暇がない。大規模な事故・事件が発生すれば、企業は法的・社会的責任を問われ、企業の存続に重大な影響を与える(図1)。

図1 最近発生した企業の事故・事件の例
(出典:当社作成)

たとえば食品企業においては、下記のような重大事故・事件が繰り返し発生している(表1)。

表1 2000年以降の食品事故・事件

(出典:当社作成)

特筆されるのは、発現したリスクそのものだけではなく、必ず有事対応の巧拙が焦点になっていることだ。時として、発生した事実そのものよりも強い社会的関心が寄せられる。 
たとえば表1の「(1)」「(2)」「(4)」の事案においては、経営陣のマスコミ対応に厳しい批判が向けられた。記者会見や取材において企業側の説明が不十分であったことに加え、テレビカメラの前での不用意な発言や態度がおもしろおかしく取り上げられ、企業としての信頼を失うこととなった。 
また「(3)」「(5)」の事案では、異味異臭がしたとの顧客からの申し出に対して、企業側が危機の予兆を十分に把握・分析できず、初動対応が遅れた。そのため、被害の拡大や、自主回収・公表判断の遅れにつながった。 
さらに「(6)」の事案では、企業が知らない間にSNS上で虫混入写真が投稿・拡散されるという新たなリスクが襲い掛かり、慣れないSNS対応に企業側は右往左往した。企業は、発信者への不用意な働きかけ、不適切な情報発信によって、さらなる“炎上”事態に追い込まれた。

食品企業に限らず、有事において企業は、マスコミ・SNS対応、自主回収など被害拡大防止措置、被害者対応、行政対応など、いずれも困難な課題と同時に向き合うこととなる。リソースが限られている以上、企業がこれらを完璧にこなすことは不可能だ。かといって危機対応への準備を怠れば、いずれの課題への対応も不十分となり、社会から痛烈な批判を受けることになるだろう。社会からの信頼を維持し、存続をはかるためには、平時からの備えが必要である。

具体的には、危機発生時の基本的な対応手順について、危機管理マニュアルやチェックリストとして整備すること、これらの文書を役員や管理職に研修で周知徹底すること、さらにはシミュレーション訓練や緊急記者会見訓練などを通じて関係者の経験値を高め、マニュアルを見直すことが重要である(図2)。

図2 危機発生時の課題と事前の備え 
(出典:当社作成)

大切なのは、上記のプロセスを定期的に繰り返すことである。重大事故・事件が毎年自社に起きる訳ではない。それゆえ危機に備える意識は低下していく。だからこそ、定期的に文書を見直し、研修・訓練を継続するという危機管理のPDCAも重要である。

今後、人間のミスや不正を低減する技術として、人工知能の成熟が期待される。人工知能は、危機事態において人間の判断の補完にも役立つのではないかと考えられている。しかし、結局のところ、これを使いこなして最終判断・対応をするのは人間である。社員一人ひとりが危機管理に対する意識を高め、備えをしておかなければ、危機対応を成功させることはできない。

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