新型コロナウイルスによる肺炎流行事態への新型インフルエンザBCP(事業継続計画)の適用について

事業継続(BCM)

2020年2月3日

リスクマネジメント事業本部
BCMコンサルティング部
部長代理

石井 和尋

中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎は、各国で封じ込めに向けた努力がなされているところであるが、現時点では封じ込めの成否や収束時期の見通しが立っていない。

 

日本国内でも20人の感染者が確認され(2/2時点)、日々増加傾向にあるものの、政府による水際対策のほか、多くの国民が新型肺炎に関する情報を入手して感染予防に努めたり、医療機関における態勢整備が図られたりしつつある。一方で、症状の出ない感染者が多数いるとされ、彼らが知らず知らずのうちに感染源となって、国内でも一定規模の感染拡大、あるいは特定の職場での局地的な蔓延が発生する可能性は否定できない。

 

既に多くの企業では中国への渡航自粛措置を講じたり、中国事業の休止の長期化に備えた検討に着手したりしているほか、国内オフィスの従業員に対しても大規模な在宅勤務を指示したり不急の出張・会議を取りやめたりしている企業も見られる。現時点では感染予防対応が、企業による国内対策の中心だが、今後の国内外での感染の広がり次第によっては、本格的なBCP対応が求められる。

 

新型肺炎拡大に応じたBCPを考えるのであれば、多くの企業で既に整備されている新型インフルエンザ流行を想定したBCPを適用するのが妥当である(新型肺炎の致死率と新型インフルエンザのそれは現時点で2%程度でほぼ同等。)。しかし、新型インフルエンザBCPは作成後10年程度経過している企業が多いと思われ、作成以降、内容もほとんど見直しされていなければ適用にあたり再検討の余地が大きい。また、担当者も異動しているケースがほとんどと思われ、現在のBCP担当者は、早急にその内容を確認して必要な見直しを行い、万一の場合、円滑に適用できるように備えておくことが必要である。

 

以下、過去に作成した新型インフルエンザBCPを、新型肺炎が流行する事態に適用する際の留意点について述べる。

 

  ①意思決定、情報発信の態勢

   ・危機対策本部の立ち上げ基準・決定フローは明確か。

   ・意思決定者や報告エスカレーションフローは現状に即しているか。

    また、意思決定者が会社に参集できない場合の意思決定フローは定められているか(電話、web会議等)。

            また、代行者は定められているか。

   ・従業員への連絡手段や、社内広報手段は定められているか(従業員にも周知されているか。)。

   ・社外への広報手段は万全か(外部委託先によらずとも在宅ででも広報できるか。)。

   ・関係者の連絡先は最新か。 

 

  ②継続すべき重要業務

   ・継続すべき重要業務に変更はないか。従業員の感染リスク減少の観点から、さらに絞り込みはできないか。

   ・それら重要業務は、顧客や取引先等社外関係者の(今の)期待に一致しているか。

   ・業容拡大・M&A等により、対象業務・拠点などに抜け漏れはないか。

 

  ③重要業務の継続方法

   ・在宅勤務制度やITの整備進展等も考慮し、感染リスク減少の方向で改められないか。

    例えば、金融機関ではインターネットバンキングの普及を考慮し、以前より営業継続店舗を絞り込めないか。

   ・代替生産などの代替戦略は、実効性があるか(代替候補拠点は適当か)。

 

  ④発生・流行の段階のあてはめ

   新型インフルエンザBCPにおいては、次のような発生・流行の段階ごとに、何を継続し何を縮退するか、を規定している例が多いと思われる。

海外発生期:海外で新型インフルエンザ等が発生した状態。

国内発生早期1:国内のいずれかの都道府県で新型インフルエンザ等の患者が発生しているが、全ての患者の接触歴を疫学調査で追える状態。

国内感染期1:国内のいずれかの都道府県で、新型インフルエンザ等の患者の接触歴が疫学調査で追えなくなった状態。

小康期:新型インフルエンザ等の患者の発生が減少し、低い水準でとどまっている状態。

 

新型肺炎の流行に対し、このような段階が公に示されるかどうかはわからないが2、感染拡大が持続するようであれば、各企業は自発的に新型インフルエンザBCPの流行段階を適用し、その段階に応じた行動を取ることになる。現時点の新型コロナウイルスの国内感染状況を仮に上記の段階に当てはめてみると、「国内発生早期」とみることができる。新型インフルエンザBCPで規定した国内発生早期段階のアクションを現在、取っているだろうか(取っていないとしたら、その判断は適切だろうか?)。一方、今後、新規感染者の感染源が疫学的に追えない事例が出てくれば、次の「国内感染期」に移行するが、その時の社会の実態や罹患率・欠勤率・流行ピーク継続期間等が新型インフルエンザBCPでの想定と一致するかどうか確認し、機械的に当該段階の行動をあてはめない柔軟性も求められる。

 

確認・見直しにあたっては危機管理担当部門は事態を軽視せず、関係部門と危機感を共有のうえ、迅速かつ強力に連携することが必要なのは言うまでもない。

 

1 この下に各都道府県での発生・流行状況に応じた「地域未発生期」「地域発生早期」「地域発生期」の区分がある。

2 新型コロナウイルスが特措法の対象である新感染症に指定されるかどうかは流行拡大の程度、重症化の程度によるが、仮に特措法の対象となれば、同様の段階が公的に示される可能性はある。

 

<参考>新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQA(厚生労働省ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00002.html

 ※上記URLは随時更新されておりますので、「新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQA」でご検索ください。(2/19追記)

石井 和尋

リスクマネジメント事業本部
BCMコンサルティング部
部長代理

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