ESGに関する4つの取り組みステップ

ESG/CSR/環境

2019年12月11日

リスクマネジメント事業本部
コーポレート・リスクコンサルティング部
ESGグループ

主任コンサルタント

菊地 克行

ESGという言葉を頻繁に耳にするようになった。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉である。ここ数年のお客様からのESGに関するお問い合わせの頻度は増えており、内容も過去とは異なってきている。日本では、2017年に、世界最大の運用資産残高を抱えるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG指数を選定したことが大きな要因と考えられる。

 

GPIFのESG指数選定を受け、大企業を中心に、ESG評価機関の評価結果を足掛かりにESGを強化するべく、企業のESGへの注目度が高まった。また、ESGのテーマのひとつであるサプライチェーンマネジメントは、取引先のESG管理を指すことから、大企業から取引先の中小企業に対して、ESGの取り組み状況の確認や監査が行われ始め、中小企業にも一定の影響が生まれている。このように、ESGは、投資家から大企業、中小企業へと波及している。

 

さまざまなお客様からお問い合わせを受ける中、企業の規模や取組状況によらず、ESGを自社の仕組みに反映させるステップには共通点がある。本コラムでは、企業がESGの取り組みをレベルアップさせる上でのステップを簡潔に紹介する。

 

【現状把握】

ESGを構成するテーマには、Eは気候変動、水資源、資源循環、Sは人権、労働安全衛生、サプライチェーンマネジメント、Gはコーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス等が挙げられる。企業を取り巻くステークホルダーとしては、顧客や取引先、従業員、投資家、自治体、政府、国際機関等さまざま存在し、各ステークホルダーが企業に期待するESGのテーマや具体的な取組内容は一様ではない。そのため、各ステークホルダーが自社に要請するESGテーマやその具体的な取り組みに対して、自社が現在どのような位置づけにあるのか、そのギャップを把握することをはじめに実施することとなる。実施方法としては、ESGの取り組みや情報開示に関するガイドライン、ESG評価機関の評価結果、取引先からの要請事項等をベンチマークに、自社の対応状況を把握する方法がある。

 

【取組計画】

取組計画では、ESGの取組目標の設定や目標達成に向けた実施施策の策定、施策の推進体制を検討する。取組目標は、自社の取り組みを促進する上での目指す到達点であり、ステークホルダーに対して自社の取組意欲や取り組みの進捗状況を伝える基盤であるため、いつまでに・どのような状態を目指すのか、具体的に示すことが望まれる。また、目標の達成に向けて具体的な施策を策定し、その施策を遂行する部署・組織を定め、ESGの取り組みを推進することが求められる。なお、ESGは地球環境問題や人権問題、取引先管理、自社の人材育成、コーポレート・ガバナンス等、幅広いテーマを包括するため、取組計画を定める際には、自社として重点的に取り組むテーマを特定し、リソースを注力することも効果的である(いわゆる「マテリアリティの特定」)。

 

【各テーマの取組推進】

取組計画が定まれば、その計画に則って取り組みを推進するのみである。ESGは一つの部署で対応できるものではない。CSR部やESG推進室といった旗振役のみでは、各取り組みを推進することは難しい。CSR部やESG推進室は、世界的なトレンドにアンテナを張って情報をキャッチアップし、現状把握で確認されたステークホルダーの期待と自社のギャップを整理してトップマネジメントに情報をインプットする役割がある。そして、トップマネジメントの理解や協力を得た上で、各ESGテーマの実務を担う各部署と調整・交渉を重ね、取り組みを推進することが求められる。なお、ESGには多くのテーマが包括されるため、一定期間の中で全て対応することは難しい場合がある。その場合には、対応コスト(自社の稼働、他社への外注)や対応期間(短期または中長期に対応)、実施効果(投資家やESG評価機関からの評価)等を勘案し、取り組みの優先度を整理する方法がある。

 

【情報開示・エンゲージメント】

ESGは、投資家やESG評価機関をはじめ、世界中の様々なステークホルダーが注目するテーマである。そのため、取組内容は、積極的に情報開示することが大切である。情報開示が不十分であると、ステークホルダーは、あの会社は考えていない、取り組んでいない、と認識してしまう。このため、まずはWEBページ上において、ESGの各テーマの取り組みについて開示することが重要である。開示内容や情報の粒度は、現状把握で用いた、ESG評価機関の評価方法やガイドライン等を参考にできる。なお、ESG情報は、世界中のステークホルダーが確認するため、日本語だけではなく英語での開示も念頭に置かれたい。そして、開示内容をもとに、各ステークホルダーと自社の現状や将来の計画についてエンゲージメントを重ね、様々な意見やアイディアを受け、取り組みのさらなる発展に活かすことが望まれる。

 

ESGは、持続可能な社会の実現を目指すという大きなテーマにおいて、投資家視点で形成された言葉と理解している。持続可能な社会を目指す上で、企業に求められる取り組みテーマとその内容は常に変化していく。そのため、上記のステップを何度も繰り返すことがESGのレベルアップの一助になるのではないだろうか。

菊地 克行

リスクマネジメント事業本部
コーポレート・リスクコンサルティング部
ESGグループ

主任コンサルタント

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