ナノテクノロジーに関連するリスク――基礎的な知見の提供(190131)

「あらゆる産業の基盤となる技術」であるナノテクノロジーは急速に進歩しており、ナノマテリアルを含む数千の消費者製品が市場に出現しています。しかし一方で、過去20年間で実施されたナノ安全性に係る広範囲な調査・研究においても、ナノマテリアルによる環境やヒトへの健康の影響は十分に解明されていないため、ナノテクノロジー産業の大きな障壁となっています。

ヒトは長い時間を経て免疫機能を獲得し、その免疫系は、主に感染症や腫瘍性疾患から宿主を保護するために進化してきました。そのため、何らかの理由で免疫系の制御が損なわれると、アレルギーや自己免疫反応が結果として生じます。現代では、化学物質やナノマテリアルなどの生体異物にばく露される機会が増加しており、時に免疫系の恒常性や正常な機能を破壊します。

ナノマテリアルに対しては、一般的な化学物質のリスク評価、すなわち、有害性確認、有害性要因判定、ばく露評価及びリスク判定で評価されています。しかしながら、世界規模でナノテクノロジーに関する研究開発がより速いスピードで進展している状況を踏まえれば、ナノマテリアルの安全性に係る試験のコスト、時間及び実験動物等により、従来のアプローチは破綻しつつあることから、ナノマテリアルのリスクガバナンスについての革新的なイノベーションの創出が切実に望まれています。

本報告では、世界保健機関が公表した「世界保健機関による環境保健クライテリア文書(2017)」や世界各国で公表されている論文等を参考にして、まずはナノテクノロジーの基礎情報や、ヒトへの健康影響、毒性作用、免疫毒性など、賠償リスクにつながる前提となるリスクに関する基礎的な知見について解説を行います。本資料が貴社のPL対策やリスクマネジメントにお役に立てば幸いです。

*キーワード:ナノマテリアル、ナノテクノロジー、健康被害、毒性
*地域:日本、国内、海外