米国における誤使用と予見義務――米国PL判例における誤使用の取り扱いと日本との差異(180829)

日本にPL法が導入された1995年当時、ほとんどの日本国内向け製品のメーカーが行ったことは、警告表示対策とPL保険への加入でした。製品の安全設計の見直しを行ったメーカーもあるにはありましたが僅かでした。設計や製造の見直しといった安全対策にはお金がかかります。製造ラインの変更に伴うコストより、警告表示の見直しに伴うコストの方が、はるかに安いからです。別に日本メーカーを責めているのではありません。PL先進国の米国でもPL追及が厳しくなった1975年当時、米国の約2/3のメーカーが行ったのも警告表示の見直しでした。

この警告表示の見直しで行われたことは、今まではデメリット表示になるからといって表示してこなかった事柄の記載と、あれもこれもと事細かく警告に記載するようにしたことです。今までは「そんな警告を記載すると危険な製品と思われて売れなくなる」という営業部門からの突き上げで実施できずにいましたが、「赤信号、皆で渡れば怖くない」といった感じで、皆一斉に警告表示を始めたのです。その効果はてきめんでした。PL裁判では、警告表示があったにも係わらず、それに従わず製品を使用した場合、「誤使用」のメーカー抗弁が認められるようになりました。当社が委員参加していた(独)製品評価技術基盤機構(NITE)の誤使用検討部会でも、警告表示があれば、すぐに「誤使用」との判定が下されていました。
※当社はこの単純な誤使用判定に反対し、「メーカーが合理的に予見すべき誤使用」の概念をNITEに紹介していきました。これが後の「誤使用ハンドブック」へと発展して行きました。

本紙では、日本のPL裁判と米国のPL裁判とを比較した場合、依然として両者に乖離が見られる「誤使用」の概念について、判例を通じてご理解いただけるよう紹介しています。日本の「誤使用の概念」で製品作り(製品設計)を行い、設計で意図しない使用方法・使用環境については警告で対処するやり方で作られた製品を、そのまま米国に輸出した場合、大きなPLリスクがあると思うからです。本資料が貴社のリスクマネジメントにお役に立てば幸いです。

*キーワード:誤使用とPL、PLから見た誤使用、ミスユース、製品の誤使用、改造、予見義務、プロダクト ライアビリティ、製造物責任
*地域:米国、日本